乳児のこころを育てる童謡と絵本選び~乳児期の視る力、聴く力をふまえた歌や絵本の選び方


こんにちは、クーミンこと眞田 久美(さなだ くみ)です。
認可保育園にて保育士を経て、民間企業に転職。カナダ留学や日本語学校にて幼児・小学生科で日本語を教える。帰国後は、保育サービス企業でフランチャイズの英語プリスクールのスーパーバイザーを担うなか、認証保育園の立上げに参加。同認証保育園の園長を経験。後年は、民間学童保育施設の施設長を経て、教務関連業務、社内研修などを担当。現在は、フリーランスで保育士向けの企業研修や個人企画のセミナーなどを行っています。
4月も終盤になり、新入園児も通常保育になっていることと思います。しかしながら、保育士は連休明けまで、新入園児の対応に追われがちです。特に乳児クラスは、新入園児の受入れだけでなく、在園児もお部屋が変わったり、先生やお友だちが変わったりと新しい環境になることに加え、月齢、年齢によっては人見知り、後追い、いやいや期など、対応も個別になります。
そのような新年度の時期、子どもたちのこころが安定するあそびを選ぶことが大切です。4月、5月は慌ただしい時期だからこそやさしい言葉で綴られた童謡や絵本を選び、子どもたちが安心できる時間を作りたいですね。
今回は、乳児の外見からは見えない発達、聴く力(聴力)と見る力(視力)を考慮した、歌や絵本の選び方を皆さんと共有したいと思います。
基本は先生の声
前述のように、保育園の乳児クラス、特に0・1歳児クラスの運営はとても大変だと思います。
人見知りが始まっている7ヶ月前後のお子さんや1歳児クラスの月齢の高い、いやいや期に突入しているお子さんの新入園は先生方も、個々の様子をみながらの対応になりますし、その状況に、進級した在園児もちょっと甘えがちになったりすることがあります。
そのような新年度こそ、先生の声をたくさん聞かせてあげてほしいと思います。(と言っても、大きな声は控えましょう!乳児さんに大きい声はびっくりするだけです)
素話(パペットなど人形を使ってもOK)でも、読み聞かせでも、歌いかけ、手遊び、何でも良いです。
特に0歳児さんは、CDなどの音楽より人の声による歌の方が聴力を鍛えると言われています。なぜなら、3か月くらいですとまだ旋律(メロディ)はわからないと言われ、反面、聞きなれた声の区別がついてくると言います。
聞こえる仕組みと乳児の聴く力
それでは、耳はどのような仕組みで音が聞こえ、機能として発達するのでしょうか?
耳は外耳道に音が入り、鼓膜を振動させ、脳に伝わることで聞こえます。内耳(耳の一番奥)のもとになるものは、妊娠4週頃にでき始めます。そして、妊娠16~20週頃には形態的には完成しています。その後28週頃から赤ちゃんは実際に音が聞こえています。
つまり、耳は五感に関する器官で一番早く発達します。しかし、音として認識し反応するのは生後3か月頃であり、聞こえた音を言葉として認識するのは9~10か月頃でしょう。
童謡が乳児の耳と心にやさしいワケ
前述の聞こえる仕組みにおいて、音は振動によって聞こえることを知りました。つまり、言葉は音の集まりでできていることになります。音に反応する生後3か月くらいでは、まだメロディーやハーモニーはわかりません。リズムを理解するだけです。
したがって、聞こえる(振動を感じ取る)機能を鑑みると、シンプルなリズムと抑揚を備えた童謡やわらべうたが、聴く力を育むためにもよいのです。そして、伝統的な童謡やわらべ歌などは、母語の特徴的なリズムとイントネーションを備えているので、子ども(特に乳児)の脳や耳、聴こえる声が言語を発声する準備となり、感情と言葉のバランスがとれた表現が育まれると言われています。
おススメのわらべうたや童謡
わらべうたは、 シンプルなメロディーとリズムで構成されており、その音階は人が話すような音階でつくられたものが多く、子ども(特に乳児)にはとてもなじみやすいものです。また、そのリズムは、心臓の鼓動にあったリズムと言われています。0~2歳児のスキンシップが大事な時期に、子どもにふれながら、わらべうたを歌うことで子どもは安心感を持つことができます。
くまさんくまさん・あしあしあひる・にぎりぱっちり・だるまさん・うまはとしとし・うちのうらの・
おせんべやけたかな・いっぽんばし・あがりめさがりめ・にらめっこ・げんこつやまのたぬきさん
童謡は、子どもに歌われることを目的に作られた創作歌曲を指します。時代が変わっても、歌い継がれてきた童謡は、古き良き日本の季節や景色、文化が残っています。音を言葉として認識するステップとしても童謡は非常に重要なツールです。
春:ちゅーりっぷ、ちょうちょ、 おはながわらった、こいのぼり、おつかいありさん、春がきた
夏:あめふり、かたつむり、かえるのうた、あめふりくまのこ、うみ、きらきら星、たなばたさま
秋:とんぼのめがね、つき、まつぼっくり、どんぐりころころ、大きな栗の木の下で、おんまはみんな
冬:たきび、あわてんぼうのサンタクロース、お正月、ゆき、たこのうた、まめまき、コンコンクシャンの歌
乳児の視力発達の順序
乳児の目は、視覚器官としては生まれる頃にほぼ完成していますが、視力、視界、色の認識などの機能は未熟で、月齢を経るにつれて少しずつ発達していきます。
新生児は、焦点距離が顔から16cm~24cmくらいの範囲に限られており、また認識することができる色は、黒、白、灰色だけです。そして、まず、明度(色の明るさ・暗さの度合い)が先に発達し、次に色相が発達します。一般的に明度の高い黄色や赤・青・緑などの、はっきりとした原色も見えやすいと言われています。
乳児にオススメの絵本
乳児期の視る力をふまえて絵本の選択を鑑みると、明度の高い黄色やパステルカラー、赤をはじめ、青・緑などの、はっきりとした原色が見えやすく、色の認識をしやすくなります。また、音を言葉として認識する練習として、短い言葉が繰り返されるような絵本が良いでしょう。2歳児には、生活に沿った内容や短い会話のある内容の絵本を選んでみましょう。

0歳児:じゃあじゃあ びりびり、がたん ごとん がたん ごとん、いない いない ばあ、あかちゃん、
いいおかおもこ もこ もこ、おつきさまこんばんは、ぎゅう ぎゅう ぎゅう、
1歳児:きんぎょがにげた、くだもの、いただきまあす、かくしたのだあれ、くつくつあるけ、ころちゃんはどこ、
だるまさんが、たまごのえほん、たべたのだあれ
2歳児:しろくまちゃんのほっとけーき、ねないこだれだ、ぞうくんのさんぽ、ノンタン ぶらんこのせて、
おでかけのまえに、もりのおふろ、やさいだいすき、いやだいやだ
新年度という、新しい環境に安心感が必要な時期に、先ずは、傍にいてくれる大人が安心できる存在であることを声で積み上げていきましょう!
クーミンは保育者向けのセミナーやカウンセリングなども行っています。
4~6月は、新学期の知っておきたいシリーズとして、新任の保育士や幼稚園教諭だけでなく、ベビーシッターや学童保育指導員、もちろん2年目、3年目の先生でも役立つ情報を少人数セミナーで行っていきます。
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≫『K.Sティーチャーズマインドサポート』
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≫『言葉が心を育てる…保育・教育ティーチャーサポーターの思う”こころ育て”』
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