エプロンを使ったシアターにチャレンジ!~保育のねらい・作り方・演じ方~

エプロンを舞台に見立て、ポケットから人形を取り出したり付けたりしながら演じるエプロン人形劇(「エプロンシアター(R)」)。
次は「何が起こるのかな?」と子ども達もワクワクする出し物です。
一方で「作るのが大変そうで、演じるハードルも高そう」と感じている保育者も多いかもしれません。
しかし、布のやさしいぬくもりや見ている子ども達の反応が分かるなど魅力もがいっぱい!
今回はシアターを演じるにあたっての保育のねらい、作り方・演じ方をお伝えします。
初めて作る方もこの記事を読んで、ぜひチャレンジしてみてくださいね。
目次
エプロン人形劇・「エプロンシアター(R)」とは?
「エプロン人形劇」とは、演じ手が胸当て式のエプロンを着け、そこを舞台に見立てて物語を展開させていく人形劇です。
人形がポケットから次々と出てきたり、エプロンの布地をめくって場面が展開するなど驚くしかけがあるシアターは見ている子ども達にもドキドキ・ワクワクが伝わります。
「エプロンシアター(R)」の基礎知識
保育の現場では「エプロンシアター(R)」の方が良く耳にするかもしれないですね。
「エプロンシアター(R)」とは、中谷真弓さん(現:乳幼児教育研究所 理事)が考案されたオリジナルなシアター・保育教材を指します。
1979年に雑誌『幼児と保育』に掲載されたことで世に広まりました。
子どもたちの目の前でポケットに入っていた人形を取り出したところ、単に人形を見せるよりも集中し、物語の世界に引きこまれた様子を見たのをきっかけに考え出されたそうです。
「エプロンシアター(R)」は乳幼児教育研究所の中谷真弓さんの登録商標です。
個人的にオリジナルのお話しやデザインで作った作品に「エプロンシアター(R)」の名称を使ったり、販売したりはできません。
※この記事は乳幼児教育研究所の許可をいただいて、記事化しております。
保育のねらい~指導案の書き方~
エプロン人形劇をする際にはどのようなねらいが考えられるでしょうか?
まずは指針から5領域の「言葉」のねらいを確認してみましょう。
1 ねらい
(1) 自分の気持ちを言葉で表現する楽しさを味わう。
(2) 人の言葉や話などをよく聞き,自分の経験したことや考えたことを話し,伝え合う喜びを味わう。
(3) 日常生活に必要な言葉が分かるようになるとともに,絵本や物語などに親しみ,保育教諭等や友達と心を通わせる。
「幼保連携型認定こども園教育・保育要領」より
乳児~幼児期は自分や他者の気持ちを伝え合えるようになる基礎をつくる大切な時期。
物語を通して、たくさんの言葉を浴びたり、登場キャラクターの気持ちを想像したり……
エプロン人形劇はそんな一つの機会としてピッタリ。
これをもとに、実習記録、指導案や月案では以下のような書き方ができます。
<ねらい>
●興味をもって保育者のお話を聞く
●物語を通じて、お話・想像の世界にはいりこむ
<活動内容>
・3分程度のエプロンを使ったシアターを行う
・物語の進行に応じて、かけあいを楽しむ
<環境構成>
・子ども達も触れるフェルト製人形のエプロン人形劇を用意する
・見えづらい位置がないか事前にチェックをする
シアターの実践が終わったら、「子ども達はどんな反応だったか? 内容がやさしすぎたり難しすぎたりしなかったか? 改善点はないか?」など振り返りもぜひしてみてください。
どんな時にエプロン人形劇をするの?
次の活動に移る前の導入に、
給食の前のお楽しみタイムに、
バスレク、誕生日会などの出し物として……
エプロン一つあれば、いつでもどこでもできるのが魅力のこのシアター。
記事の後半でもお伝えしますが、生活のルール(健康・エチケット・交通安全)などを子ども達に伝えるのにも最適です。
対象年齢は?
聞き手の子ども達の発達にあわせて物語の題材を考えることも大切です。
また、考案者の中谷真弓さんの論文では、「乳幼児だけでなく、障害児も興味をもってエプロンに人形をつけた」様子が描かれています。
お話は完全に理解できなくても「一体感をもって楽しい雰囲気を味わう」などのねらいをもとに、縦割りクラス(異年齢クラス)でおこなったりしても良いですね。
エプロン人形劇の3つの魅力
パネルシアターや手袋シアターとも似ていると思う方もいるかもしれません。
しかし、エプロン人形劇ならではの子どもたちの興味をひきつける魅力もあるのですよ。
演じ手そのものが物語になれる
保育者自身が舞台やナレーター・登場人物になり、演じ手の表情や動作も物語の一部になるため、臨場感あふれるシアターに。
エプロンがあれば一人でどこでもできるのも魅力です。
なじみのあるエプロンという素材、そして子どもからも保育者の顔がしっかり見えるので、子どもたちも安心して物語を見られます。
子ども達の反応に合わせてアドリブを入れたり、保育者も楽しみながらおこなってくださいね。
多様なしかけができる
次々にポケットから人形が出てくるだけでも十分楽しいですが、それ以外にも加工しやすい素材を生かしたさまざまな「しかけ」を作ることができます。
たとえば、エプロンを2枚用意し手早く着替えて場面転換をしたり、ポケットが開閉したり……様々な工夫ができるのです。
子ども達も「次は何が起こるのだろう?」と想像力がかきたてられます。
あたたかみがある素材で洗濯もできる
子どもたちが触って参加できる内容にアレンジすれば、あたたかい感触も味わってもらうこともできますね。
また汚れた時は何度も洗えて衛生的です。
万が一壊れてもお直ししながら長年使用できます。
【作り方】世界に一つだけの舞台を作ろう
自作することで体のサイズに合ったエプロンの舞台が作成できます。
体の大きさにフィットしていると、自分が演じやすいだけでなく子どもたちからも見やすくなりますよ。
※【注意】「エプロンシアター(R)」は登録商標のため、オリジナルで作ったエプロンを「エプロンシアター(R)」と名付けて使用・販売することはできません。
1.題材を決める
まずは、どんな内容の物語にするのか、登場人物はどうするのか、必要な小物は何か考えましょう。
【例】大きなかぶ
場面や登場キャラクターをリスト化すれば、作るべき人形や小道具の不足がなくなりますよ。
簡単にイラスト化したり、台本を作るとよりわかりやすいです。
2.材料を用意する
- 【基本の材料】
- ・エプロン用の厚めの生地
・人形用のフェルト
・綿
・マジックテープ
・裁縫道具(糸・針など)
エプロンの布地は自由ですが、ふわふわとした厚手のパイル地が人気なようです。
こんなエプロンを使うのもオススメ
乳幼児研究所からは無地のパイル地をキルト加工したシアター専用のエプロンもあります。
「初心者だけど自分で作ってみたい!」という方はこちらを活用するのもよいでしょう。
購入はこちらから。
3.エプロンの型をとる
型紙や普段使っているエプロンを基に型を取っていきましょう。
本に型紙や台本がセットになっている場合もありますね。
4.エプロンにポケットを作る
物語に合わせ必要な部分にポケットを縫い付けます。
5.フェルトで人形を作る
登場人物や小物類をフェルトで縫っていきます。この時ポケットに入れるものは大きさに注意しましょう。
中に綿をつめると立体的になりますよ。
6.エプロンとフェルトにマジックテープをつける
物語に沿ってエプロンと5の工程で作ったものにマジックテープをつけ、つけ外しができるようにします。
マジックテープを付ける前に位置に間違えがないか鏡を見ながら再チェック!
完成
あとからキャラクターを増やしたりしても楽しいですね。
~既製品も上手に活用して~
「裁縫は苦手だけど、シアターをやってみたい!」という方は、市販の物を活用しても良いですね。
自分で作るより少し高価ですが、繰り返し使えます。園で購入してもらえないか交渉してみましょう♪
※「エプロンシアター(R)」は登録商標のため、フリマアプリなどで許可なく違法に売られているものも買わないように気を付けましょう。
【演じ方】ポイントとコツ
「全身を使って演じるなんてなんだか難しそう」と思う方のために、基本的な演じ方のポイントをご紹介します。
演じる前に最終チェック!
物語をスムーズに進めるためにも、エプロンの位置は重要です。
鏡を見ながらチェックをしましょう。
- 【最終チェックのポイント】
☑エプロンの首のひもは、胸高になるように調節する
☑腰ひもはゆるめに結ぶ
☑しかけや登場人物の位置を確認する
腰ひもを体にぴったりするようにきつく結んでしまうと、エプロンの見える部分が狭くなり、正面以外から見る子ども達にとって見づらくなります。
演じ方のポイント
最終確認ができたら、いよいよ本番です!
演じ方のコツをおさえておくだけで、子どもたちの物語への入り込み方も変わってきます。
- 【演じ方のポイント】
☑顔はなるべく下(エプロン)を向かず、子どもたちの方向を見る
☑人形の顔は子どもたちに向ける
☑人形はゆっくり、大げさに動かす
☑直立不動ではなく、場面に応じて体を動かす
☑正面以外で見ている子にも見えるよう、体の向きを変えながら演じる
たとえば、人形同士が会話している場面でも、人形同士を向かい合わせるのではなく、見ている子ども達の方に向けましょう。
【動画】実演動画を見てみよう
実際に子ども達の前で演じているので、導入から語りかけ方・どのように歌と組み合わせるかが参考になります!
強い北風とあたたかく朗らかな太陽の対比をはっきり演じわけられ、演じ手がダイナミックに体を動かしているのが印象的です。
子ども達も楽しそうに最後まで参加していますね。
詳細はこちらから。
生活ルールもシアター形式で楽しく学べる
エプロンと保育者の手がつながっている個性的な形。
たとえば、手洗い・うがい、今の時代欠かせない咳エチケットなども学べます。
物語だけでなく、このような生活ルールや健康についてもシアターだと楽しく子ども達が親しむことができますね。
エプロンを使ったシアターに挑戦してみよう!
「チャレンジしてみよう!」という気もちは出てましたか?
一針ずつ縫って作るのは労力もかかりますが、エプロンシアターは子ども達の表情を見ながら演じ手も一緒に楽しめるのがなによりの魅力です。
休日などにぜひ作ってみてはいかがでしょうか?
◆関連記事◆
・題材選びはこちらから! 「エプロンを使ったシアター題材集~対象年齢別・保育園で演じたいテーマ12選~」
参考資料・論文
- 中谷真弓・浅野ななみ(1988)「保育教材としてのエプロンシアターの研究」『日本保育学会大会研究論文集』(41),46-47
- 福岡貞子(1990)「エプロンシアターの研究Ⅲ:視聴覚教材としての課題」『日本保育学会大会研究論文集』 (43), 232-233
- 中谷真弓(1997)「障害児におけるエプロンシアターの研究(2)〔パイルエプロンの実践から〕」『日本保育学会大会研究論文集』(50),686-687
- 鳥越亜矢(2002)「保育教材の製作過程における支援を考える:エプロンシアターの製作・上演を通じて」『山陽学園短期大学紀要』33(0),65-90
◆ご協力◆
・乳幼児教育研究所
しおっぴぃさん(2016年3月29日)
さるかに合戦の手袋シアターを作りました☺︎
ほいくらいふ運営部さん(2020年2月26日)
>しおっぴぃさん
ぷっくりした柿がかわいらしいですね!
布の温かみも感じます。
ご投稿ありがとうございました!