保育士からの相談「何度も同じ失敗をして叱られる…」~心のバランスを保つために~


こんにちは、保育・教育ティーチャーサポーターのクーミンこと眞田 久美(さなだ くみ)です。
今回の「保育士のお悩みレターより」第3回は、保育士自身の心のお悩みです。
保育士からの相談~何度も同じ失敗をして叱られる~
ある保育士の方から、こんな相談をされました。
自分の不注意を叱られることは理解できますが、何度も同じ失敗をしてしまうと、時々、どうすれば良いのかわからない時があります。
自分では、一所懸命にやっていると思っています。どうすれば、叱られなくなりますか?
この先生(A先生)から、このような相談メールが送られてきたのですが、詳しい状況がわかりませんでしたので、直接、お話を伺えるかをお尋ねして、お会いすることにしました。
A先生は、今年1歳児の担当をされている2年目の保育士。ちなみに昨年度は、複数担任として3歳児を担当していたそうです。
叱られる理由は、持ち物の返し忘れだったり、その日の役割を忘れてしまったり、動きが遅かったり…などだそうで、殆どが日々のルーティン。だからこそ、「この間もやったよね!」と叱られてしまうということでした。
私から見たA先生の第一印象は、優しそうな表情の中に意思の強さがある方…という印象でした。
たぶん、とても保育の仕事が好きで、真面目な方なのでしょう。
だからこそ、一所懸命で、完璧にやろうとしてしまうのかもしれません。そして、その焦りが次の失敗を生んでしまっているのでは…と思いました。
保育の仕事はチームワーク
そこで、先ずは、1歳児の担当に必要な動きを整理することから始めました。なぜなら、乳児クラスは、保育士同士の連携が、日々の保育にとってとても重要なのです。
保育士の仕事は、特に乳児クラスではベビーシッターなどと異なり、一人で行う仕事ではありません。園によって方法は異なりますが、基本的に日ごと(週ごとの場合あり)に役割分担が決まっているケースが多いものです。したがって、日案や週案に沿って園児をリードする役、活動の準備をする役、雑務を引受ける役など、複数の先生が同じことをするようなことは、大人数でのイベントを除いて、普段のクラスワークでは滅多にないと思われます。
つまり、いかにその日(または週)の役割を果たし、他の先生の動きや子どもの動きをみて、自分の立ち位置を知り、動けるかが、日々のルーティンをスムーズに行うポイントとなるのです。そして、乳児クラスの場合、サポート役の役割が大きなポイントになります。
「サポート役」保育士が気を付けたい3つのポイント
【その1】別角度から子どもを見る
リーダー役の先生について動くのではなく、常に反対側にいて、別の角度から子どもの動きや様子を見ること。自由遊びなどでは、保育士同士でくっつかずに、子どもの遊びの様子を多角的に観て、他の先生のいる位置と対角になる場所など、常に別の角度から子どもをみる。
【その2】自分自身が楽しむ
活動(歌、手遊び、おゆうぎ、体操など)では、自分自身が楽しむ。保育士の楽しそうな動きや声に子どもたちがおもしろがって真似をするもの。 子どもたちの笑い声を作るのは、リードする保育士ではなく、サポート役の保育士であることが多いものです。そして、そのサポートが子どもたちとの信頼関係をより積み上げていきます。
【その3】安全面を確保する
子どもたちが動く時には、先に安全面の確保をすること。例えば、
* 給食やおやつの後には、下に食べ物が落ちていないか確認し、すぐに拭く(アレルギー対策)
* 自由遊びなどで子どもに長い物持ったまま移動させない
* 散歩の時には、横断歩道で全員渡り終えるまで見届ける
など、先回りして動くことで、安心感のある保育士になることが信頼される秘訣です。
職場でのコミュニケーション3つのポイント
保育・教育の職場は子どもたちの育ちの場
A先生のように「叱られる」ことのストレスが積もってしまうと、子どもたちへの接し方にも影響が出てしまうものです。
保育の職場は、子どもたちの育ちの場であって、保育士の社会勉強としての場はバックグランドで行うものです。したがって、叱る側も、場所やタイミングを考える必要があります。
しかし、「叱られること」を問題にする必要はありません!叱られることは悪いことではないのです。だから、失敗しても「学び」と信じて、自分の糧にしていけばいいのです。自分を「ダメな先生」と思ったりせずに、同僚や先輩と失敗を共有してみましょう!
一日の中で15分でも、週に1回でも、良いと思います。ミーティングの場を設けて意見交換をする時間を持つということでも良いでしょう。
アイディアを出し合ったり、失敗談を聞いたりと、情報を交換し、体験を共有することで、引き出しが増えます。その引き出しが知識になり、あなたの保育の幅を広げていきます。
人と比べない癖をつける
複数の人が仕事をする職場は、良い点も多くありますが、同期で入社(就職)した同僚と、つい比べてしまいがちです。これは、職場に限らず、同じ年齢であったり、違う職場だけれども同業であったりすると、自分の失敗を「自分の力不足」「私には向いていない」などと卑下してしまう方がいますが、その必要はありません。
大切なことは、あなたが保育士という職業を選んだ思いです。今年出会った子どもたち一人一人の10年後、20年後がどんな人生であってほしいかを、「あなた自身の思い」を子どもたちとの日々の生活に添えていくのです。
だから、子どもたちへも「他の子どもと比べない見方」をすることが大切なのです。
自分自身の精神衛生を守る(プライベートの時間を大切にする)
組織や複数での活動では、協調性が求められます。しかしながら、育った環境や経験が異なった人間が集まって、一つの場所で過ごし、仕事をしていくわけですから、時には精神的に疲れてしまったり、自分の言いたいことを言えずに我慢が重なったりして、ストレスが積もってしまうこともあります。
教育の仕事は、「人」を相手にしていることもあり、事務的に感情を切り替えることが難しい場合があります。
精神衛生を保つためにも、休みの日は、仕事のことを一旦、忘れて、プライベートの時間を重視しましょう。気持ちの切り替えが子どもの見方や安全につながります。
また、同じ職業を持つ仲間と情報の共有・交換ができる機会(夏期のセミナーなど)が持てるようであれば、参加するのも良いでしょう。違った考え方や、新しいプログラムを学ぶことができ、また同業者は、同じような経験をしていることもあり、辛さに共感してもらえるだけで気持ちが変わります。
先生である前にあなた自身が大事
教育業界、大変です。
長年、乳幼児から小学生までの子どもたちの保育・教育に関わってきて、私自身も悩んだり、迷ったり、保護者からお叱りを受けたりして、がっつり落ち込んだことも多々あります。
しかし、「子どもたち1人1人のユニークさ」は、何ものにも変えられず、私に様々な感情を与えてくれました。一緒に笑い、泣き、悲しみ、怒り、互いに成長してきました。
辛いな、大変だな…などなどネガティブな思いのなかにいる先生方、もう一度、ご自身の「思い」を振り返ってみてください。
そして、「その場に固執しない」という選択もあることを覚えておいてください。
なぜなら、先生も1人の人だから。
子どもたちを大切にするには、まず、あなた自身を大切にしましょう。
お休みも返上して、準備や雑務に追われている先生方もいらっしゃるでしょう。でも、ぜひ 何にもしない日、または仕事以外のことに時間を使う日 を持ってくださいね。一日の保育にどのくらいの体力を使うのかわかりません…。子どもに限らず、人を相手にする仕事は、知らず知らずのうちに、体力、気力を消耗します。
だからこそ、あなた自身の時間を大事にしてください。
一人でもいいですし、仲間と一緒でもいいでしょう…
あなたにとって心地よい時間を大切にしてみましょう!
それが、あなた自身を肯定する一つの方法です。
そして、その肯定感が、日々の保育にもつながっていくのです。
A先生の後日談
相談中、「できないことに罪悪感や恥ずかしさがある」と涙ぐみながら話していたA先生。私は、「大丈夫。わからないことは質問・相談してみよう」と提案していました。
そんなA先生から、先日、嬉しいメールが届きました。
A先生は、これまで聞けなかったことや間違えやすいことを洗い出し、一緒に担任をしている先輩保育士に相談しながら改善策を考えたそうです。すると、先輩保育士からは「やる気が出てきたね!」と褒められ、間違えを恐れていた時よりも、失敗や間違え、叱られることもなくなったのだとか。それは、不安があったら確認する!忘れそうなこと、間違えそうなことはノートに書いてクラスで共有する!ということを続けた結果でした。
「自分からわからないことを聞いたり確認したりするようになって、担任同士のコミュニケーションがよくなったと思います」
メールはそう締めくくられていました。
このように先生同士が信頼し合う姿は、子どもたち同士のコミュニケーションにもつながるのです。
A先生と同じような悩みを抱えている保育士さんは、ぜひ参考にしてみてくださいね。
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≫『言葉が心を育てる…保育・教育ティーチャーサポーターの思う”こころ育て”』
クーミンは保育者向けのセミナーなども行っています。
≫『K.Sティーチャーズマインドサポート』
ぷぅさん(2017年10月31日)
初めまして、ぷぅと申します。
私は臨時を5年近くやっていました。そして今年の4月から正規になり、新人として仕事しています。
私の担当は0、1歳児の1歳を担当しています。
4人の先生と一緒に仕事をしています。
私はよく報告を忘れることが多々あり、先輩からは責任感がみられない。などで叱られることが9月から多くなりました。
言い訳になってしまいますが、自分は頑張っているんですが、それが逆に悪い方向にいってしまい、お部屋の先生や園全員の先生たちに迷惑をかけてしまいました。
主任からの提案もこなしていたのに、最後にミスをしてしまい結局また迷惑をかけてしまいました。
主任は自分で言うのが嫌になり後輩の先生に伝えてきて。と頼まれ、私に指導を伝えに来てくれます。
私は、この仕事が好きなんですが主任が言ってる通りに臨時に戻ったほうがいいんでしょうか?
クーミンさん(2017年10月31日)
ぷぅさん、初めまして。クーミンこと、真田 久美(さなだ くみ)と申します。
ほいくらいふのコラムをお読みいただき、ありがとうございます。
また、コメントを下さり、重ねて感謝いたします。
コメント、拝見しました。
コメントの内容だけですと、ぷぅさんのお勤めの保育園において、臨時職員と正職員の業務の違いや、具体的にどなたに向けた報告を忘れてしまうのか、何を頑張っているのかなど、情報が不足しているため、参考になるかわかりませんが、一つ、確実に言えることは、ぷぅさんご自身は、どうされたいのか?ということです。 主任の先生がおっしゃるように臨時職員に戻りたいですか?
もし、正規職員で続けていきたいと思われるのであれば、まず、ぷぅさんにお勧めすることは、どうしたら、(どなたに向けたものかわかりませんが)忘れずに報告することができるかを考えて、実行することです。
コラムの事例で登場したA先生も、自分が間違えやすいことをリストアップして、自分なりの改善策を考えて、一緒にクラスを担当している先輩保育士に、「しばらく、この方法でやってみます」と間違えない工夫をしたそうです。
これは、保育業界に限らず、一般企業でも言えることですが、上司など上に立つ人は失敗したことを責めていません。失敗に対し、どう向き合ったかを見ます。(それが新人に対する教育になります。それができない上司は、上司が問題です!)
もしかしたら、5年間臨時職で頑張ってきたぷぅさんなら、自分で解決する方法を考えて、乗り越えるだろうと、主任は思ってくださっているのではないでしょうか。
失敗が続くと、(迷惑をかけてしまった)と罪悪感が募ってしまい、どんどん精神的にネガティブになってしまいます。
そのような時こそ、一旦、ゆっくりと自分の行動を振り返って、どこを変えれば、失敗しなくなるかを、冷静になって考えてみましょう。
そして、その方法を、同室の先生方にも、(この方法で、やってみます!)と宣言してみましょう。一つの方法が上手くいかなかったら、別の方法でやってみればいいのです。(ポイントは、自分で考えた方法であること。人から言われてするより、失敗しても納得ができ、後の学びにつながります)
ぷぅさんが、これからも好きな保育の仕事を楽しくできますよう応援しています。