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子供がついてくる保育を!~”支配と管理”から”受容と信頼”へ

子どもとの関わり

子どもに求める○○できる_アイキャッチ

保育士おとーちゃん(須賀義一)保育士おとーちゃん(須賀義一)

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今までの記事の中で、子供と信頼関係を築くためには、子供たちのありのままを受け入れる受容が大切だと述べてきました。しかし、実際には子供に”○○できる”を求めることによって、”支配”する保育を行うことが当たり前になってしまっていることがあります。

今回は、「”支配と管理”する保育から”受容と信頼”する保育へ」をテーマに全3回に渡ってお伝えいたします。前編は、保育の実践に当てはめて“信頼”“受容”の必要性について考えていきましょう。

過去の記事はこちら≫『信頼関係と受容について~過去記事一覧~』

子供に「○○できる」を求める保育

子供に「○○できる」ばかりを求めていくと、保育士は「子供の支配者」になりかねません。そこでの「うまい保育」とは「いかに子供をうまく支配できるか」になってしまいます。

いまだに耳にする「子供に”なめられるな”」を旨として保育を考えているところなどは、その端的な一例と言えるでしょう。

子供を支配しなくても適切な保育ができているか?

子ども受容・信頼関係_保育

実のところ、子供を支配してしまうのは難しくありません。

例えばですが、子供を叩くことは簡単にできてしまいます。叩くことはないと思いたいのですが、子供を保育園に預けている母親から「通わせている保育園の保育士が普段から子供を叩いていて、周りの保育士もそれを止めていないようです。それってどうなのでしょうか?」と聞かれたことがあります。

大変残念なことに、その保育士は「できる」を先において、それに「従わせるため」というスタンスに陥り”目的が手段を正当化”してしまい、自分が何をしているかについて無自覚・無反省になってしまったのでしょう。

周囲の保育士も自分は叩かないまでもそれに同調してしまっているか、自信をもって「叩くことは保育としておかしい」と言えなかったのかもしれません。

また、これには社会通念も関係しています。ある調査では「子育てには子供を叩くことも必要だ」と回答した人は50%を超えていました。【引用元:長谷川博一著『お母さんはしつけをしないで』(草思社)】

保育士は子育てのプロとして、叩かなくても適切に子育てできる方法を明確に示さなければなりません。もちろん自身もそれが実践できなければなりませんよね。

あなたは叩かなくても適切に子育てできる方法をきちんと確立できていますか?また、その方法を他者に伝えることができるでしょうか?

“効率”の良い保育「疎外」は危険

子ども受容・信頼関係_疎外

あからさまに叩くことはしなくても、子供を支配する方法はいくらでもあります。その最たるものは疎外することです。

普段から子供に対してイライラや冷淡さを出すことで子供の不安感を刺激し、保育士の顔色をうかがわせるように仕向けます。また、存在や居場所を否定するようなことをして思い通りに動かそうとするのです。そのようにすれば、効率よく子供を支配することができてしまいます。

言うことを聞かない子に対して「赤ちゃん組に連れて行ってしまいますよ」といったしばしば気軽に使われている言葉も、子供の疎外感を引き起こし不安にさせて「言うことを聞かせよう」とする行為の1つです。

先程お伝えした「子供になめられるな」式の保育も、子どもを支配するため疎外威圧を使っています。

事例から考える~疎外する保育とは?~

子ども受容・信頼関係_ほいく実践

ある1歳児クラスがありました。そのクラスは、疎外を常用する保育をしてしまっている2名の保育士が担任です。他に、若手と新人の保育士もいます。

その2人は普段から冷淡さを醸し出していて、子供たちはその保育士の顔色を日々うかがっています。そのため、子供は安心して過ごせていません。

また、子供たちにとって、保育士はあたたかく見守り受け止めてくれる存在ではなく、”ダメ出し”といった「否定」の行為や命令ばかりをする「支配者」になってしまっているので、保育士に対して子どもたちは信頼感を持てなくなっています。

そのためクラスの子供たちは、着替えやおむつ替え、食事などの生活の切り替え場面などでごねることが多くなってしまったのです。

戸外に遊びに行く際も、靴を履くにも簡単には従わないので、保育士はそれを厳しい顔、冷たい表情でやらせています。やがて、若手の保育士たちもそれを真似するようになっていきました。

しかし、保育士は、そういった子供たちの行動の原因が自分たちにあるとは考えていませんので、「言うこと聞かない子は散歩に連れて行ってあげないよ」などさらに疎外の関わりをし”言うことを聞かせる保育”を積み重ねていってしまったのです。

保育士と子供の間が信頼関係で結ばれていませんので、子供は大人の指示に従わなかったり、保育室などから出ていったりしようとする行動が多くなっていきます。

その行動に対して保育士は、また否定的な気持ちで注意や連れ戻すなどを繰り返さなければならないので、より信頼関係が低下するという悪循環が起こります。

子供と心でつながることをせず、大人の望む行動の結果だけを目指して力技の保育をしてしまっているのです。

本来、

保育士 ←(信頼関係)→ 子供
を目指さなければならないのに、
保育士 →(支配・管理)→ 子供
になってしまっているのです。

その子供たちは、保育園に来るのが嫌で仕方がありません。朝は、家庭や保育室の入室時に激しく泣いたりごねたりします。

保育中に精神的な負荷をかけられ、我慢したり注意されたりすることが多いので、そのしわ寄せをお父さんお母さんがお迎えに来た後で、何かにつけてごねたり、わがままを出したりすることでバランスをとっています。

つまり、保育の不手際を家庭に押しつけてしまっているのです。保護者はそこに保育上の不手際があったということがわからなければ、「ああ、子供とは大変だなあ」と思ってしまうことでしょう。「子育てはうんざり」「子供はひとりでたくさん」などと思わせてしまうかもしれません。

しかし、疎外を使った保育はことさら声を荒げるでもなく、叩くでもなく、それでいて子供に言うことを聞かせてしまえるので、「うまい保育」と考えてしまっている人がいるのも事実です。

保育士の意識が”おちこぼれ”を作っている

子ども受容・信頼関係_できる

“子供に言うことを聞かせる保育”は、1度身につけてしまうと変えていくことが難しくなってしまいます。その保育士の目線からは、子供が達成すべき課題を保育士の関わりによって達成させているだけなので、おかしなところがあるように見えないのです。

「自分たちの保育は正しい」というところに疑問を持たないので、問題があるのは、子供や家庭・親と考えるようになってしまいかねません。

例に挙げた保育士たちも、子供に対する否定的な言葉や、家庭に対して「しつけがなってない」「ちゃんと見ていないからだ」といった文句をしばしば口にしていました。

このような保育をしてしまうと、「可愛い」と思えるのは素直に言うことを聞く子だけになっていきます。その結果、個々の子供への関わりに温度差ができ、好意的に見てもらえない子はより保育士の意図に従わない子になってしまいます。

それは”保育士の意識”が「おちこぼれ」の子供を作っているということです。

「ああ、あの子は大変な子ね」と他の職員からもレッテルを貼られ見られるようになってしまうと、その子はより救われなくなってしまうでしょう。

支配する子育てが当たり前になっている

子ども受容_支配

実を言うと、子供に言うことを聞かせる子育ての方法は、これまでの日本の子育ての方法として一般的に多く見られるものでした。つまり、”当たり前”になっています。保育士はその”当たり前”を「効率よく」「徹底して」やってしまっているのです。

保育士が、「”効率よく”子供を支配する子育て」を何の疑問もなく身につけてしまうと、自分が親になり我が子を育てる時に失敗してしまいます。家庭でそのように関わられることは、子供にとって逃げ場のないとても大きな負荷になるからです。

一般の人も、少なからず子供に「言うことを聞かせる」子育てをしています。

ある人は、叱ること・怒ることを多用して、ある人はお菓子で釣ることで言うことを聞かせます。またある人は、「いいなり」になることで子供になんとか従ってもらおうとし、例に挙げたように我が子に「疎外」を使うこともあるでしょう。

そういった関わりをしても、さほど問題なく子育てができてしまうこともあります。しかし、近年は子供に関わる大人が減り、さまざまな理由から養育力が減少し、子育てを投げ出したくなってしまう人がいるほど子育てが難しい時代になっています。

受容と信頼の保育

保育_信頼関係

保育士が、世間一般でされていることを是非も考えずただそのまましているだけでしたら、子育ての専門家として胸を張ることはできないでしょう。

園で過ごしている間はもちろん、家庭に帰っても穏やかに過ごすことができ、家庭の人に「子供は可愛い」「子育ては楽しい」と思わせるような仕事をしなければならなくなっています。

そのためには、子供を大人の思い通りに「支配・管理」してしまうような関わり方を安易にとってはなりません。目指さなければならないのは、子供自身が大人を信頼し、生活や園での活動などに自発的なモチベーションを持って自分から取り組めるようにサポートしてあげることです。

それを僕は「受容と信頼の保育」呼んでいます。「受容と信頼の保育」は、保育士も持ってしまっている”当たり前”を一旦乗り越えなければならないので、理解し身につけるまでは少し難しいでしょう。

しかし、それを理解し実践していくと、ずっと保育が楽しくある意味ではラクになり、よりやりがいの実感できる仕事となっていきます。

次回は、それについて述べていきたいと思います。

中編の記事はこちら≫『保育で1番大切なこと』

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コメント

  1. プロフィール写真

    あいさん(2016年5月6日)

    保育にも子育てにも参考になりました。ありがとうございます。

  2. プロフィール写真

    みぴょんさん(2016年6月9日)

    言葉の選び方や、ちょっとした事でも変えられる事があると学ぶ事ができました。
    さっそく実践してみようと思います♫

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この記事を書いた人

保育士おとーちゃん(須賀義一)
1974年生まれ。公立保育園勤務の後に退職し、現在は子育てアドバイザーとして講演、執筆活動を行なっている。従来の子育てを見直し、個々を尊重した関わり、子育ての仕方を提案している。 二児の父でもあり、保育士としての経験を生かした子育てブログ『保育士おとーちゃんの子育て日記』が多くの人の支持を得る。難しくなりがちな現代の子育てを具体的に楽しいものにしていける方法を提案している。著書に『保育士おとーちゃんの「叱らなくていい子育て」』(PHP研究所)がある。→著書『保育士おとーちゃんの「叱らなくていい子育て」』(PHP研究所)はこちら →ブログはこちら
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