日本とアメリカ 妊娠・出産経験を通しての違いを知る【授乳編】


夫の赴任でアメリカ中西部に在住し、アメリカにて妊娠、出産、子育てを経験したシルクと申します。日本では保育士として7年ほど勤務していました。自らの子育て経験と保育経験を通じて日本との違いを取り上げていきたいと思います。
前回までは、妊娠、出産における日米の違いを述べてきました。今回は産後の生活、乳児の子育てについて書いていきます。
前回記事
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授乳問題に悩む日々
帝王切開にもかかわらず、保険の関係もありわずか3泊で退院することになった筆者。病院のようにスタッフの出入りがないので、自宅へ帰ってからの方がホッとすると思ったのもつかの間でした。
授乳のスペシャリストの指導もイマイチで成果はなく、子どもに吸わせていたものの出産から4日経っても母乳が出ず…「そんなに焦らなくてもいいよ」と周りから言われましたが、目の前の子どもにはあげないといけません。
とりあえず病院からの試供品と市販の液体ミルクで対応していました。しかし液体ミルクはコストがかかります。栄養も考えできれば母乳であげたいとは思うものの、出ない母乳をどうするか悩みました。
これではまずいと思い、藁をもすがる思いで助産師経験のある元同僚に日本へメールで連絡しました。彼女に教えてもらった方法をすべて実践したらあっという間に母乳が出たのです!
日本人には日本人に合った指導が1番!と感動しました。他に授乳について相談できる機関を病院で教えてもらいましたが、そもそもここは日本人が少なく日本語で相談できません。当時は今よりもっと英語が理解できていなかったので、質問はおろか、問い合わせする気すら起きませんでした。ただでさえ寝不足で頭が回っていなかったので、英語なんて出てきません。
その後の我が子ですが、生後2ヶ月で液体ミルクが美味しくないと感じたのか飲まなくなり、日本の粉ミルクの方が気に入ってしまいました。母乳をあげられない(私の外出や睡眠確保)時は、日本のミルクを作るか冷凍の搾乳で対応するようになりました。どうやら液体ミルクは味が薄く、日本の粉ミルクの方が母乳に近いやさしい味のようです。
授乳時は授乳ケープを基本的に使います。プライバシーの線がはっきり分かれているためなのでしょう。公共の場でもこれなら気にせず授乳することができます。むしろ日本のような授乳室を見つけることの方が難しいのです。日本ほど授乳室はあまりありません。授乳ケープをつけるのはそのためでもあるかもしれません。
むしろ、私は一時帰国した時に女性同士の時は思いっきり胸を見せて授乳している姿に逆カルチャーショックを覚えました。もともと日本人でありながらも海外生活をしているとこのようなギャップがあるのだと、我ながら感じた出来事でした。
なんと退院2日後とその1週間後に健診があったのです!
授乳でフラフラした中、退院してわずか2日後に子どもの健診がありました。夫と通訳者を伴っていたのでやりとりは問題ありませんでしたが、体力的には正直きつかったです。それなら入院中に実施してほしいとすら思ったものです。おそらく保険の関係で長く入院できないのも大きい理由だと思います。
小児科健診はこれだけでは終わらず、さらに1週間後に体重測定があります。この時は、私の休養を考慮して夫が1人で子どもを病院に連れて行ってくれました。
アメリカにいて思うのはふにゃふにゃの新生児を連れて買い物や旅行などをしていることが珍しくないのです。無痛分娩が普及しているためか、体力に負担がないのか、そもそも体質的に体力や筋力があるのか、お母さんたちの体力にビックリです。日本でいう「産褥期」なんてないのかもしれません。
産休育休が日本のように長期で保障がなく、フルタイムでも大抵3ヶ月前後で復帰します。無痛分娩や計画帝王切開があるのも職場復帰を見据えたものなのかもしれません。
アメリカで育児をしていてよかったこと
日本で言われているような「母乳で育てるべき」といった母乳神話のプレッシャーは感じられません。母乳がうまく出なければミルクで育ててもなんら問題はありません。
アメリカはフルタイムで仕事をしている女性が多く、職場復帰後はデイケア(保育園)に預ける人が多いと思われます。搾乳されたものを冷凍することも考えられますので一概に母乳で育てていないとは言えませんが、母親以外に、ミルクを飲ませてもらうというケースも多いのではないかと考えられます。
他人に干渉する風潮はないので、自分の好きなように子育てができるのはよいところです。
アメリカで育児をしていて大変だったこと
個人差があると思いますが、母乳に影響する食べ物や生活習慣などがありました。私の場合、お餅を食べるとパンパンに張ってしまうので、お雑煮やおしるこが食べられませんでした。またサウナも身体を温めるため、母乳が出すぎて困りました。(逆にいうと、母乳が出ないときには熱いお風呂やサウナは効果的です)
日本では一般的に授乳中にお酒を飲むことはNGと聞きますが、アメリカでは人によって違いますが「少し飲んでもその分の母乳を絞って捨てれば問題ない」という考え方があるのを聞いてこれまたビックリでした。
1番怖かったのは乳腺炎です。万が一かかっても対応できる病院はないと言われたので、これにはかなり敏感になっていました。張ってしまって困った時はとにかく絞りました。絞り過ぎもよくないとは思いましたが、とにかく張るよりはマシだと思ったからです。
こんな時、日本のように助産師や助産院で母乳指導を受けられたら…と思ったことが何度かありました。なぜ助産師対応がないかというと、同性であっても胸を触る行為はセクハラにあたるのだそうです。このあたりも文化の影響があるのだと感じました。
海外での子育て経験を通して、自分の経験や日本での常識が必ずしも正しい訳ではないことを知り、授乳一つとっても、文化や価値観が反映することを感じました。
保育士は、自身の経験や知識だけではなく、何事もお子さんやご家庭によって違いがあることを前提に保育に携わっていけるとよいですね。「こうあるべき」のアドバイスも時には大事かもしれませんが、その前にお子さんや各家庭の背景にあるものを読み取ることがさらに大切ではないでしょうか。
今まで妊娠から出産、子育ての違いをご紹介しました。次回は小児科健診についてお伝えする予定です。
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