テクノロジーの力で子育ての悩みを軽くする


保育士の河西ケイトさんが保育業界の課題に対し保育業界以外の人との対談を通して保育業界の課題解決のヒントを集め、また保育の現状を広く伝えるための連載企画です。
今回はパパ・ママの気持ちをちょっぴり軽くするアプリ「baby rattle bab bab」を提供しているbaby toi代表の平野聡子さんに、アプリ開発のエピソードや保育とITとの付き合い方について話を伺いました。
「携帯電話に赤ちゃんをあやす機能がつけば、お母さんの荷物がひとつ減らせる。」そんな気づきから、2009年にいち早く赤ちゃんのガラガラアプリ・baby rattle bab babを企画・開発する。以降、ベビー&キッズや家族をターゲットにした50以上の企業やサービスとのコラボレーション多数。そのジャンルはアプリや商品開発、ワークショップ、イベントデザインなど多岐にわたる。これまで都内や地方都市で、1000組以上の親子ワークショップ講師を務める。TIAAブロンズ受賞。
baby toi 公式サイト
子育ての実体験から生まれたママのためのアプリ
子育ての苦労を身近なもので解決
河西 こんにちは、今日はよろしくお願いします。聡子さんが開発された赤ちゃん向けのアプリケーションを初めて目の当たりにしたとき、良い意味で大変衝撃を受けました。このアプリケーションを開発した経緯というのを伺ってもよろしいでしょうか?
平野 私は子どもが2人いるんですが、2007年に長男を出産した時に、住んでいる世田谷区が子育て激戦区で保育園に全く入れなかったんです。それに加えて、世の中は子育て中のママに対して風当たりが強くて…電車でベビーカーを利用していると、他の乗客の方から冷たい目線を向けられたり、カフェで打ち合わせをしている時に、子どもが泣き出してしまって、子どもを抱いてあやしながら対応していたら、そこのオーナーさんに「うるさいんでなんとかしてください」と言われたこともあって本当に、肩身が狭い思いをしました。
そんな時に、iPhoneが発売されて、傾けたり振ったりすると反応が変わるというような加速度センサーが付いていると話を聞きました。携帯電話は、お母さん達が普段持ち歩いているものなので、この普段持ち歩いているものでなにかお母さんの手助けができるのではないかと思い、周りの方々の協力を仰いでこのアプリを開発しました。
河西 その当時は、マタニティマークやベビーカー論争がありましたよね。私も未来を担うのは子どもたちで、その子どもや、子どもを育てているお母さん達を邪険にする大人に全く共感ができずに「何故?」とビックリし落胆した記憶があります。実際にアプリを使ってみましたが、加速度センサーって凄いですよね。この、アプリのおもちゃは、時間によって背景なども変わるというお話を以前伺いましたが、実際に利用した方からは、どのような声があがっているんでしょうか?
平野 2009年の当時はアプリの競合などはほとんど無くて、日本よりも海外のユーザーが多かったんです。そこから海外のメディアに大きく取り上げていただき爆発的なヒットをして、2010年に逆輸入的な感じで日本に入ってきたんです。リリースからもう9年経っているんですが、当時赤ちゃんだったお子さんが今、9歳くらいなんですね。そのお子さんのお母さんとお会いすると、「アプリ使ってました!」と言う嬉しい声をいただくことが多いです。会うのはそこが初めてなんですが、アプリを通して子育てをしてきたという一体感が生まれて私自身も大変嬉しく思います。またお子さんがいない方も、このアプリの存在を知っている方が多くいて、「泣いている子がいたので、アプリを利用してあやしました!」や「友達のお母さんに宣伝しました。」などの声もいただいています。
河西 凄いですね。海外は、「面白そうだから試してみよう!!」そんな思いの人が多いので、新しいことがどんどん広がるんですよね。日本は色々な面で閉鎖的であり保守的ですからね。海外での成果が認められて、日本でこうして大きくアプリの活躍の場が広がったことに嬉しく思います。
テクノロジーがママの気持ちを軽くする
平野 今はアプリの内容も「AR」を利用して更に幅が広げられるように進化しています。
河西 「AR」を利用した内容とはどのようなことなんでしょうか?
平野 このように、画像の中にARのプログラムを組み込んで、アプリをかざすと絵が動くんです。私の理念は「ママの気持ちを、ちょっぴり軽くしたい」という気持ちでいます。やっぱり、全てを救うことは無理に等しい、でも、アプリやテクノロジーを使ってお母さんたちの気持ちが少し楽になったり、子どもの泣き声に怯えず、外に外出するきっかけの一歩になればいいなぁ…そんな思いで日々開発に取り組んでいます。
河西 本当にそうですね。今のお母さんたちは「孤育て世代」と言われています。子どもが泣くと、周りに責められる…そんな部分だけが先走りしてしまい、引きこもり育児になっているなんて話もよく聞きます。そんな時に、このようなアプリの存在を知れば、外に出る勇気にもなるし、お母さんたちにとっても、アプリがお守りがわりになるかもしれませんよね。とにかく、外に出ることが子育て中には本当に大切なので、アプリを知らない人に存在を知ってほしいなぁ…。
ICTとうまく付き合うことで、気持ちを楽に育児を楽しむ
アプリやICTのおもちゃが増える未来
平野 外だけに限らず、家の中でもこのアプリを利用してほしいなと思います。例えば、寝かしつけってお母さんがもっとも苦戦する育児の中の一つだと思うんですけど、このアプリを起動して、親子で楽しみながら寝かしつけができるような「しかけ作り」の工夫したりもしています。
河西 子どもって、親の寝かしつけようって雰囲気を感じ取る力がすごいですからね。たしかに、楽しみながらこうしたやり取りができるのって良いかもしれませんね。アプリから流れる音も、聴き心地が良いのですが、やはり音が子どもにもたらす癒やしの周波数みたいなものも研究されているのでしょうね。保育の現場でも、こうした技術が生かされることが近い将来来るかもしれないですよね。
平野 実際に、今販売しているプレイマットをお子さんたちが集まる場所で利用するために購入してくれた方もいました。こうしたICTを活用したグッズがおもちゃになる日も来るかもしれませんね。話は変わるんですが、最近子どもにかかわる事件が多いじゃないですか?まだ開発の途中なんですが、子どもの危険を見守る機械も作ってまして…これは、見守るだけではなくて、こどもに遊びを提供もしてくれるロボットタイプのものなんですが…。
見守りロボット「バブバブちゃん」
河西 見守りタイプのロボットですね。以前睡眠中の子どもを見守る機械の研修に出たんですが、もの凄い緻密にお昼寝のチェックをしてくれていて、人間はその日の体調に左右されてミスを起こすことはあるけれど、機械にはこうしたミスはほぼ無いのでどんどん参入していくべきだなぁ…とも思いました。医療の現場も、人間がミスを起こしそうなところは機械ですからね。その分、違う所に目を向けられる(手厚くできる)のでいいと思います。保育の現場でも今後活用できれば良いと思います。保育士さんや保育に関わることで今後何ができるのでしょうか。
ICTのメリットデメリットを正しく理解してほしい
平野 保育士さんや保育園がいろいろな情報を知ることで、まだまだ発展していく、(より広がっていく)可能性があるんだなと思います。そして、何よりも保育士さん達が、ICTのメリットやデメリットもきちんと把握し勉強しておくことが大切です。SNSの投稿などを見ていると、お母さんたちが、保育園の様子を投稿しているんですが、自分の子だけではなくて、他の子の顔も写っているのを見ると許可は取れているのか?保育園はどんな対応してるんだろうか…などと疑問を感じる時もあります。そういったことから、ネットマナーや情報リテラシー、そして、個人情報の保護など、情報化社会の基本をきちんと学んで身につけて、お母さんたちへおろしていってほしいと思います。
またヴァーチャルばかりに頼るのではなくて、頼ってもいいけれど、リアルでの体験をまずは大切にして、その次にアプリなどの仮想現実が存在していることも忘れないでほしいと感じています。今後、ICTやIoTの技術はどんな進化をとげるのか、私も楽しみです。子育てに悩んでいる方が、テクノロジーの力を借りて、少しでも気持ちを楽にして育児ができる世の中になれば良いなぁと思います。本日はありがとうございました。
河西 本当にそうですね。スマホでは体験できないことが、現実には沢山あります。触れること、感じることで、お子さんの非認知能力も育つと私は思っています。ICTとうまく付き合いながら、楽しくみんなが過ごせる世の中になってほしい…聡子さんと願いは一緒です。保育の現場にも、このアプリが浸透していくように願っています。本日は、ありがとうございました。
景翔の子ども情報局
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