保護者対応~保育園で良好な関係を築いてクレームを防ぐコツ~


保育の仕事をしていると、絶対に避けて通れない「保護者対応」。うまく関係が築ければよいけれど、もし嫌われてしまったら…?クレームを受けてしまったら…?そんなことを考えると不安になりますよね。
とくに若い保育士さんの場合、子育て経験もないしどのように話をしたらよいかわからない…と、悩む方もいるのではないでしょうか。
私も保育の仕事を長く続けていて、たくさんの保護者と関わってきました。保護者といってもお母さんだけではなく、お父さん、おじいちゃん、おばあちゃんもいますから対応した保護者は軽く1000人を超えています。
新人の頃は「モンスターペアレント」なんて言葉もよく聞いていて、漠然と「保護者は怖いもの…」なんてイメージも持っていましたが、実際に関わってみると、とても協力的で良心的な保護者が多かったです。
しかしやっぱり「うまくいかなかったこと」「クレームを受けてしまったこと」など、数々の失敗もありました。今回はそんな自分自身の経験から、保護者と良好な関係を築いてクレームを防ぐコツをお伝えしたいと思います。
保護者支援は保育園の役割のひとつ
保育園の役割を考えたときに、まず出てくるのは「子どもの保育をすること」ですよね。子どもをメインで考えがちですが、保育所保育指針には、「入所する子どもの保護者に対する支援及び地域の子育て家庭に対する支援等を行う役割を担う」と、保育園の役割として保護者支援も行うことが定められています。
保育士は、子どもの保育だけではなく、保護者への対応をすることも大事な仕事のひとつなのです。保育や子どもについて必要なことは積極的に伝えていく必要があります。
保護者と良好な関係を築くために必要な信頼関係
これから長く付き合っていく保護者ですから、相談しやすい環境、話をしやすい関係でいたほうがよいですよね。保護者との信頼関係がしっかり築けていると、お互いに気持ちよくコミュニケーションがとれ、結果としてクレームの減少にもつながります。では、どうしたら保護者との良好な関係が築いていけるのでしょうか?
良好な関係を築く上で大切なポイントは、普段から小さなコミュニケーションを積み重ねることです。
送迎時に、保育士から積極的に挨拶することはもちろん、「プラス一言の会話」を心がけてみましょう。朝は「おはようございます」だけではなく、「今日の体調はどうですか?」と、子どもの様子を聞いたり、「今日はいいお天気ですね!」なんて、世間話をしたりしても構いません。朝はバタバタしていることが多いかと思いますが、一言を意識してみましょう。
具体的に子どもの様子を伝えよう
お迎えのときには、園での子どもの様子を伝えるようにしましょう。「今日も元気でしたよ」だけではなく、遊んだ内容や友達とのかかわり、できるようになったことなど、具体的に伝えることが大切です。
・自分からトイレに行きたいことを教えてくれました
・ごはんをひとりで全部食べられました
・朝の会中大きな声でお返事ができました
・友達がケンカしているのを見て、止めに入ってくれたんですよ
・鉄棒で前回りができるようになりました
など、イメージがしやすいよう具体的に、よいことはどんどん伝えていきましょう。この一言があることで、「しっかり子どものことを見てくれていた」と、安心感にもつながりますし、一緒に成長を喜び合える関係になります。
マイナス面は慎重に
反対にネガティブな内容を伝えるときは注意が必要です。
・すぐに手が出てしまうんです
・絵本に興味がなくて、あまり聞けていません
・クラスの活動に遅れがちです
・いつも遊んでしまって身支度ができないんです
保護者がこのようなことを伝えられたらどう思うでしょうか。とても心配になりますし、悩んでしまいますよね。時にはそのような内容を伝える必要があるかもしれません。そのときは慎重に、悪い面を強調するのではなく、しっかりとよい面も伝えた上で具体的なアドバイスをするよう心がけましょう。例をご紹介します。
例:友達とケンカしたことを保護者に報告する場合
『外で遊んでいるときに、友達とブランコの取り合いになってしまいました。2人とも譲らずにしばらく言い合いを続けていたのですが、相手の友達が泣きそうな表情になっているのを見て、「先に使っていいよ」と、自分から譲ることができたんですよ!私もその姿を見て、とてもうれしくなりました。まだまだ友達とぶつかってしまうことも多いですが、少しずつ自分たちで解決する力が身についています。おうちでも、自分から譲れたことをほめてあげてくださいね。』
「ケンカをした」という言葉だけだと、よくないように聞こえてしまいますが、ケンカも子どもの成長過程で必要なことです。ケンカをした原因や経過、その中で子どもの成長したポイントを伝えることで保護者も安心することができます。
クレームにつながる事例
次にどのようなことがクレームにつながりやすいのかを考えていきましょう。
伝達忘れ、連絡ミス
まずは伝達や連絡に関すること。「保護者に伝えるべきことがあったのに、うっかり忘れてしまった」「伝え方が悪くて、正しく受け取ってもらえなかった」など、保育士も人間ですからミスしてしまうこともありますよね。
たとえば、
・着替えをしたのになぜ着替えたのかを伝えなかった
・ケガしたことを伝えなかった
・友達とのケンカを伝えなかった
しかし、保護者からしたら「うちだけ必要な持ち物を伝えてもらえなかった」「事前に聞いていたら準備していたのに…」と、対応できなかったことをストレスに感じ、保育園に対しての不信感にもつながります。このようなミスが起こらないようチェックリストをつくったり、こまめにメモをするなどの工夫をしていきたいですね。
ケガ、トラブル
次にケガや子ども同士のトラブルです。安全面に気をつけていても、転んだり、ぶつかったりというケガを100%防ぐことは難しいですよね。ケガをしてしまったこと自体は仕方がないのですが、そのケガに気づかなかったこと、何も説明がないことが不信感へとつながります。
「毎日ケガをして帰ってくるけど、大丈夫なのかしら…」原因のわからない傷は心配になってしまいます。どこで、どのような経緯でケガをしたのか、どのような処置をしたのかを伝えることが大切です。
また子ども同士のトラブルにも注意が必要です。ケンカをしていたけどそのまま帰してしまった、手が出ていたのに見過ごしてしまったなど、子ども自身が納得していないと、「○○ちゃんとはもう遊ばない」「○○くんに叩かれた」など、家で話すこともあるでしょう。何も説明を受けていないと、「うまく友達関係が築けていないのか」「いじめられているのではないか」「先生が子どもを見てくれていない」という考えになることもあります。
トラブルやケンカも成長過程で必要なことですが、しっかりとその経過を保育園と家庭で見ていけるようにしましょう。
このように起こったことが問題なのではなく、「先生が起こったことを把握していない」「子どもを見ていなかった」ということがクレームに発展しやすいです。普段から相談しやすいような関係でいることが大きなクレームを防ぐコツになってきます。
いろいろな保護者がいて当たり前
最後に伝えたいのは、保育士にもいろいろな保育士がいるように保護者にもいろいろな保護者がいます。「あのお母さん、ちゃんと家で子どものこと見てるの?」「いつも不愛想で挨拶してくれない」「登降園の時間を守ってくれない」など、不満に感じることもあるかもしれません。だからといって保育士が保護者を良い・悪い、好き・嫌いで判断したり、ましてや不満や悪口を言ったりするのはプロ意識に欠ける行為です。
みんな育った環境や考え方が違います。お互いの背景や事情をくみ取り「保護者理解」ができる、すてきな保育士になってくださいね。
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