食育も寄り添う心が大事 ~保育園と家庭で一緒に考える食育~


こんにちは、クーミンこと眞田 久美(さなだ くみ)です
6月に入りました。新入園児をはじめ、在園児も新しい環境や時間のながれに緊張をしていた気持ちがほどけて、遊びや活動も自分らしさを出してくる時期ではないでしょうか?
子どもたちの園生活の順応性を図るバロメーターの一つに食があります。「給食が食べられるようになった」「よく食べるようになった」など、食は大事なポイントです。そこで今回は、「食」にまつわるテーマとして、保護者を交えた食育を考えてみたいと思います。
食育も多様化の時代
今ではすっかり定着した食育という言葉。子どもたちに食の大切さを…と幼稚園、保育園、小学校でもさまざまな方法で取り組んでいます。
食育のいろいろ
・食べられる量を考えて食べる→できるだけ食事を残さず、食べられる量を考えて食べる(食品ロスを失くす)
・野菜を育てる→食材がどのようにできるかを体験する
・食材の栄養素を知る→料理する前の食材が、人間の体にどのように作用するのかを知る
など、食べることを通して、心身の成長を図ることを食育として、幼児教育にも取り入れられています。現代は飽食の時代(一方で貧困による飢餓状態の家庭も存在していることも認識していますが、論点がずれるためここでは触れることを差し控えます)でもあり、食育自体は、とても重要でしょう。
とくに保育園は基本的に給食があり、栄養士による栄養バランスを考えた食事やおやつが提供されるだけでなく、最近では教室ではなく食堂など別室を設け、食事を落ち着いて摂ることの利点やマナーも伝えることで食育の幅を広げています。
しかし、食育を重視するあまり、その家庭の食事を非難する(別の言い方をすると食生活を司るお母さんを非難する)ことになってしまったケースも聞かれます。 以前に下記のようなケースを聞きました。
保育士A先生の場合~お弁当の日に~
勤務先の保育園で「お弁当の日」という時に、担任をしているクラスのTくん(2歳児)がご飯と果物しか食べませんでした。おかず2品が冷凍食品と見られ、連絡ノートの食事記入欄に「冷凍食品以外は食べました。」と記入したことで、お母さんが園長に泣きながら「冷凍食品ではいけないのか…。食事は全て手作りでなければいけないのか…」と訴えてきたというのです。
確かに、冷凍食品を巡る話はよく聞きます。事実か否かはわかりませんが、幼稚園でお弁当に冷凍食品禁止(?)という園があるという話も小耳にはさんだことがあります。
A先生のケースは、まず伝え方がよくなかったのだと考えられるでしょう。もちろん、A先生の言いたいこともわかります。普段は給食なので、たまのお弁当では、家庭で食べているものを…と思い、かつ子どもの成長を考えて少しでも食事に手をかけてほしい…と思ったのでしょう。
しかし「冷凍食品以外は…」という表現は、冷凍食品だから食べないのですよと言われたように感じてしまいます。フルタイムで働いているお母さんにとっては、辛い言われ方ですよね。
また食育を考えるならば、冷凍食品にフォーカスするのではなく、どうしたら食べてくれるかの方が大切です。まず、おかずを口にしなかった要因を考えてみましょう。「大きさは?硬さは?取りやすさは?ハンバーグが大きく、お箸やフォークで取りにくく、小さくしづらく、噛み切れない…だから食べなかったのでは?」など。そう考えると伝え方も変わります。
たとえば、「おかずは残してしまいました。少し大きかったようなので、○○ちゃんの一口大に小さくしてみると食べやすいかもしれません。」 などと、伝えた方がよかったのではないでしょうか。
また、言いにくいことは「書く」よりも、口頭で普段の食事を聞きながら伝えた方が真意が伝わりやすいと思います。
保育士B先生の場合~保護者面談で~
B先生は、担任をしている2歳児クラスのMちゃんの食事記録が気になっていました。なぜならば、Mちゃんの連絡ノートの「前日の夕食」欄に「缶詰の焼き鳥」という言葉をよく目にしていたからです。他のおかずは食べていないのか、2歳児には塩分が強すぎるのではないかと心配をしていました。
そして、体重の増加が気になり(健診でも肥満気味と要注意になっていたのです)、食生活に問題があるのではないかと懸念していました。そこで、保護者面談で食事について直接お母さんに尋ねることにしたのです。
B先生は、Mちゃんの保育園での食の細さを基に(Mちゃんは4月生まれで、身体も少し大きいのですが食は細く、野菜が苦手でした)家庭での食事の様子を尋ねました。
B先生 Mちゃん、比較的食が細いように思いますがご家庭ではいかがですか?
お母さん 大人の食べる物ばかり食べたがります。お父さんの晩酌のつまみとか…
B先生 缶詰の焼き鳥ですか?他のおかずは食べないのですか?野菜類とか…
お母さん 家で好きな物しか食べないので…食べるだけいいかなと思って…保育園で給食を食べてますし
B先生 2歳児に缶詰の焼き鳥では塩分も強いですし、こういう食事が子どもの肥満の要因になっているのですよ。もう少しお子さんの食事に気を配ってください。
ここでお母さんは、「すみません」と涙ぐんでしまったそうです。確かに、2歳児に缶詰の焼き鳥は気になります。しかし、食の細いMちゃんが喜んで食べる物が焼き鳥であり、仕事から帰ったお父さんと食事をしながら楽しく過ごせる時間でもあるのです。(Mちゃんの家は、ご両親と祖父母2代でお店を営んでいました)
食事の方法を非難するより、たとえば園の栄養士や調理師に、缶詰の焼き鳥で栄養価を考えた副菜にアレンジする方法を聞いて提案したり、鶏肉は好きなのであれば、簡単に作れる鶏肉の副菜を共有したりするなどして、食を一緒に考える方向で進めた方がよかったかもしれません。
栄養士や調理師は、子どもたちの保育には直接かかわる時間は少ないかもしれません。しかし、食育に関しては大きくかかわれる大事な業務です。
食育は保育園と家庭で一緒に考える
保育園は、保育・教育の理想型を家庭にも求めてしまいがちです。したがって、保護者に対して特にお母さんに対して厳しくなりがちです。A先生、B先生もご自身が子育てをしてきた経験で、食はこうであるべき!という考え方があっての報告だったのでしょう。
もちろん、保護者の中には食事に関してもう少し気にかけてほしいな…という方がいらっしゃることがあります。その場合は、園長を中心に園全体で改善策を投じ、園とご家庭と一緒に考えていくことが大切です。
また保育園や幼稚園では、保育士自身の家の常識や方法を持ち込まない方がよいと思います。もし、その方法を共有したいのであれば、園への提案として投げかけ検討することをおすすめします。
食育も、自園が何を目指しているのかを明確にし、そのうえで目的を果たすためにどのような方法で、どの部分に気持ちをのせて行うのかをある程度決めておくとよいでしょう。文字にしなくとも、職員会議や定期的に食育研修などを行うことでもよいと思います。
現代社会は、家族のスタイルもさまざまであり、複雑な場合もあります。その多様性に保育士・幼稚園教師が振り回されないためにも、自身の知識も広げていきましょう。
クーミンは保育者向けのセミナーやカウンセリングなども行っています。
7~9月は、保育士だけでなく、英語プリスクールの先生になりたい方、栄養士や調理師、園長になった方など保育に関わるさまざまな先生方に役立つ情報を少人数セミナーで行う予定です。
詳細は、下記、ホームページをご参照ください。
≫『K.Sティーチャーズマインドサポート』
クーミンのブログはこちら
≫『言葉が心を育てる…保育・教育ティーチャーサポーターの思う”こころ育て”』
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