モンスターペアレントの気持ち


その人は本当にモンスターペアレント?
保育園や幼稚園に子どもを預けて子どもと離れて過ごす家族は自分が見ていない間に、子どもたちがどんなことをしているか気になってしょうがないのではないでしょうか。
保育者同士でもさまざまな保育観があるように保護者にも1家庭ずつの子育て観があります。自分の子育て観と保育者の保育観がずれてしまっていると、クレームは起こりやすくなっていくのではないでしょうか。
保育者
保育者の保育方針で見守り保育(子どもたち自身が折り合いをつけながら生活していくのを促す、見守る)があるとすれば、怪我につながらない場合はなるべくケンカもそばで見守り、自分たちで解決していけるようになるためのヒントを与えていく保育者もたくさんいます。
子どもたちはケンカを通して自分以外の他者の気持ちを知り、思いやりの気持ちを育てていきます。そのように、自分を知っていくのだと私たちは学生時代に学んだはずです。
【事例】
3歳児A君とBちゃんが砂場で一緒に山を作っていた。
A君は赤いシャベルを使っていて、Bちゃんは緑のシャベルを使っていた。
A君はBちゃんが使っている緑のシャベルを「貸して」と声をかけたがBちゃんは「だめよ」と答え貸さなかった。
その後A君はBちゃんからシャベルを取りあげてしまいBちゃんは泣いてしまった。
よくあるできごとですが、保育者としてどのような対応を取ったらいいのでしょうか。
もし私なら、A君がその後何食わぬ顔で砂遊びを再開したところで
「Bちゃん泣いてるよ、Aくん?」と声をかけA君にBちゃんの事を意識させる働きかけをします。
「なんで泣いているのかな?」「A君はどうしてシャベル2つ持っているの?」
など必要であれば声をかけながら、A君が自分で考える時間を作ります。
A君は考えていくうちに、『おもちゃを取られると悲しいな』という気持ちや『Aちゃんと一緒に遊びたかったのにな』という気持ちが少しずつ出てくるのではないでしょうか。
このような気持ちは、ゆっくり時間をかけて、自分が繰り返し体験していかなければ出てこないと思います。
私達保育者は、なるべく子どもたちを見守り、さまざまな「生の体験」をさせてあげたいと思いますよね。
その働きかけの結果、大人に言われなくても自分自身で考え「ごめんね」の言葉が出てくるように声掛けをしたり、寄り添ったりしていますよね。
保育者の気持ち→子どもたちがよりよく成長していけるようにと思っている
保護者の気持ち…
この事例の場合、Bちゃんはシャベルを取られてしまいとても悲しい気持ちになっていますよね。
例えば、その後A君から謝られて、その場では、いいよと言っていたけどなんだかすっきりしないまま家に帰り保護者にその話をした時、保護者の耳に入るのは「A君におもちゃとられて泣かされた」という事実ではないでしょうか。
保護者からは保育園の様子が見えません。
どんな背景があってそんなことが起きたのか、なぜ自分の子どもだけおもちゃを取られてしまったのか。
などマイナスに考えてしまう要因がたくさんあるのです。
見守り保育の意味を知らないでいると、保護者からのイメージでは、放っておかれたと思ってしまいますよね?
この気持ちのすれ違いが大きくなるとクレームになってしまいクレームをつける保護者を『モンスターペアレント』と言ってしまうのではないでしょうか。
モンスターペアレントとは極度の心配性なのではないかと私は思います。(発達障がいをもつの保護者の場合もありますが)
誰だっておかしくなりたくてなっているわけではないと思いませんか?
この人はモンスターペアレントだと決めつけて私たちが冷たく接すれば接するほど、関係は悪化していくのではないでしょうか。
どのように対処するべきなの?
モンスターペアレントを生んでしまう原因は、先程も気持ちのすれ違いをあげましたが、保護者に十分な情報が伝わっていないことです。
どのような保育を心がけているのかを保育者と保護者とでしっかりとすりあわせができていれば、クレームが起きることも少なくなるのではないでしょうか。
理不尽な言い分も良く考えてみると、保護者が「知らなかったこと」があるから出てくる言葉だと思います。
解決策としては、保育園に入園した時点で保護者向けに自分の保育観を発信していくことです。
また、毎月の園だよりや、保育参観などで、繰り返し想いを伝えていくことも大切です。
保育をしている日々の中では、朝の預りや、お帰りの時間などもチャンスですよね。
子どもはかわいいけど親は苦手と思ってしまったら、保育は半分つまらなくなってしまいませんか。
厳しい実習や、学生生活を乗り越えて取得した国家資格です。
子どものプロとして、子ども時代を経験した大人のプロにもなりたいですね。
明らかに保護者の言い分がおかしいとき
クレームの中には明らかに自分に非が無い場合もあると思います。
そんな時は自信を持って否定する勇気も必要です。
ただし話を聞かずに否定してしまうと、火に油を注いでしまうので保護者の意見をしっかりと聞き(できたら「そうなんですね」などの受容の言葉を使いながら聞く)
保護者の話を整理し、本人と確認して違うことは違うと伝えていくのが良いのではないでしょうか。
知り合いの先生の出会った保護者とのトラブルでは4歳児のショートカットの女の子がある日、髪の長い担任の先生に「先生の髪の毛長くてかわいいね、お揃いにしたいな」と褒めてくれたそうです。
女の子に対して先生は「ありがとう。○○ちゃんの髪もつるつるで素敵だね。」と返してその日は終わりました。
翌日保護者から、「うちの子どもが、髪の毛を先生とお揃いにしたいと言います。ロングヘアーは洗うのも乾かすのも大変なので、先生が髪の毛を切ってお揃いにするのはいかがですか?」と言われたそうです。
先生は切るつもりがなかったので、「そうですね、考えてみますね。」と受け流したそうですが1週間たっても先生が髪型を変えないことに腹を立て「あの先生は保護者の要望も聞いてくれない、ダメな先生だわ」といろんなクラスの先生に言いまわっていたそうです。
その後、先生と保護者の関係は悪くなってしまい、先生も自分の言った言葉に自信が持てなくなってしまったというトラブルがあったそうです。
このトラブルで、保育者ができたことは何かなかったのか考えてみると「考えてみますね。」という言葉に対して責任を持った回答をすることが必要だったのではないでしょうか。
保護者の気持ちは「ショートカットにしてもらえなかった!むかつく!」という気持ちではなく「先生は私の意見を無視した!」という気持ちなのではないでしょうか。
おわりに
モンスターペアレントの中には、自分の言っていることがたとえ間違っていると気づいていても口に出してしまったから引き返せないと思っている人も多いと思います。
保護者からの要望には、きっと知りたいことがあって悩んでいるんだろうという気持ちをもち、丁寧に関わっていくことがトラブルを生まないコツです。
また、保育者1人で悩まずに上司にも入ってもらい、みんなで考えるといいと思います。
ベテランの先生が保護者に行う態度を若い先生が行うと批判されてしまうので、保護者からの気持ちをベテランの先生に伝えベテランの先生は、そこで無理に解決しようとせず、一緒に考える姿勢をもち、時間をもらえるように提案して保育者2人で考えてから判断するといいと思います。
人間関係をよくしていくためにも、先生間のギャップを減らしていくことを心がけたいですね。
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