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保育士の給料の実態と背景~なぜ賃金が上がらないのか~

保育ニュース

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(最終更新日:2017年4月10日)

以前、現役保育士の方が給与の安さを訴える会見があり、保育士の給与について話題になりました。
保育士の処遇改善は、17年度予算案で2%(月約6,000円)程度上乗せされることが決まりましたが、過去記事「保育士給料の希望増加額は約7万円」では、5-7万増えないと復職できないという声も多くあり、未だ賃金改善には遠いといえます。

保育士の給料と運用費の流れはどうなっているのか、国の調査や施策などから今後の保育士の給与について考えてみたいと思います。

保育士の給料のしくみ・運用費の流れ

保育士の平均給与

2017年の厚生労働省「平成28年賃金構造基本統計調査」での職業別給与の調査結果によると、保育士の給与(企業規模計10人以上)は、平均月収が21万4,600円、賞与が58万4,200円となっています。(平均年齢36歳)
この数字はあくまで平均であり、初任給や働く場所によっても変わってきます。

保育士の年齢別平均給与

(厚生労働省「平成28年賃金構造基本統計調査」)

保育士は全職種の平均より月額11万円も給料が低く、給料のベースアップの幅も小さい傾向にあります。
世論では給料の低さを訴える声が多くあり、行政も改善すると声を上げていますが、なぜ一向に給料は上がらないのでしょう?
考えられる原因の一つには、保育園の制度も関係しているのではないでしょうか。

保育園の運営費と保育士の給料

保育園の管轄は、厚生労働省であり、児童福祉施設ということはみなさんご存じだと思います。
では、保育園の財源はどこからきているのでしょう。

公立の保育園は、自治体が運営しているので保育士も公務員になり、自治体の給料表に応じた給料になります。
私立の認可保育園の場合、主な財源は公的な補助金と保護者からの保育料です。
この補助金は、保育所の所在地や子どもの年齢・人数による基本額と、園の取り組み(休日保育や主任、事務の配置など)による加算で決められます。
この運営費からそれぞれの保育園から保育士に給料が支払われています。

さらに認可外保育園は、東京都の認証保育所など一部の補助対象施設を除いて、基本的に運営費などの補助はなく、保護者からの保育料のみで運営を行っています。

このように補助金は税金が使われているため、過大に上げにくく、また保育料は“公定価格”で決まっているため、事業者が勝手に上げることも難しいと考えられます。

公立と私立の給料の差

私立の保育士は保育単価や補助金などの運営費から給料が決まってきますが、公立の公務員の保育士は勤務先の自治体の給与表で給料が決まり、基本的には年功序列で給料が上がっていきます。
そのため、私立の保育士よりも高い給料の場合が多いです。
「平成27年社会福祉施設等調査」によると、東京都練馬区の保育士は平均年齢44歳で平均年収は約646万円となり、2倍近くになっています。
もちろん財政難の中、多くの自体体は人件費を下げることを求められており、非正規の職員を増やしています。
保育園が足りないと言われている中、私立保育園の処遇はもっと改善されるべきでしょう。

保育士が、安い給与の改善を訴える

保育士給料_訴える

子どもたちの大切な命を預かり、重要な時期に成長を見守り支える役割を担う保育士。
大変責任の大きい仕事であり、業務量は多く残業や持ち帰り業務もしばしば…
にも関わらず業界全体で保育士の処遇は大変低いとされています。
長年働いて給料が上がっても雀の涙ほど…そのような中での勤務は長続きせず、離職率も多い現状にあります。
給料が上がれば、離職率も多少改善されるのではないでしょうか。

昨年、保育士が給与の安さを訴える会見が行われました。

現役の保育士などが、安すぎる給与の改善などを訴えた。
手取りの月収は、24歳2年目でおよそ11万4,000円、28歳6年目でおよそ14万円。これは、フルタイムで働く保育士の給与明細。

上記の給与の変化を見てみると、2年目で月給約11万4,000円、6年目で約14万円。
4年間で約2万6000円しか賃金は上がっていません。

SNSでも保育士が自身の給料を公表し、リツイートを呼び掛け話題になっていました。
現在は削除され見られなくなってしまいましたが、他にも保育士の給料を巡ってさまざまなツイートがされています。
その一部を紹介したいと思います。

園によっても給与額に違いはありますが、実際に働いている保育士の方だけでなく、園に通っている保護者の方や保育士の友人の方などさまざまな声がありました。
歳を重ねるごとにどんどん昇給していくといったことはよほど待遇のいい園でないと難しい状態です。

今後保育士の給料は上がっていくのか

厚生労働省は、平成27年4月から始まっている子ども・子育て支援新制度において、平成29年度末までに約40万人分の保育の受け皿を確保するため、民間保育所で働く保育士の給料を平均5%改善すると発表しています。
さらに、キャリアアップとして主任になる前の段階に「副主任保育士」「専門リーダー」職を設け、この人たちを対象に月額4万円「職務分野別リーダー」職には4,000円の処遇改善を行います。

近年では株式会社の参入も増え、給料改善に取り組んでいる会社もあります。株式会社ソリューションでは、保育士業界で働く保育士全員を対象に、給与水準の最大18%、初任給も業界トップ水準まで引き上げると発表しました。

少子高齢化問題及び待機児童問題が深刻さを増す今、このように行政、民間を問わず保育士の処遇改善に向けた取り組みが見られますが、すぐに大幅な改善は難しいでしょう。
その間にも離職率は上がっていく可能性もあり、対策の早急化が必要と思われます。

保育士の給与の安さが訴えられる中、園長らが不正!

保育士給料_不正

一方このような給料の安さが問われる中、園長らが園の資金で不正したという悲しいニュースもありました。

2011年度からの4年半に約4,600万円の私的流用や使途不明金があったと発表した。男性園長と妻の副園長、会計担当の保育士が、運営費を職員との懇親会や高級車の購入に充てていた。【引用:毎日新聞】

このような事件があると、安い賃金で日々頑張っている保育士の方は心が折れてしまいますよね。
まだまだ、保育の仕事は「子どもと遊んでいるだけ」「子どもが帰ったらおしまい」と誤解を受けやすい職業でもあります。

このようなニュースは、処遇改善の必要性を訴える上で、弊害にもなりかねません。
実態を伝えるためには、今回現場の処遇の低さを訴えた保育士さんのように、働く人が自ら行動を起こして現状を訴える必要もあるのかもしれません。

保育士の心の余裕が保育の質につながる

課題が多い保育士の処遇改善問題、皆さんはこの現状を見てどのように感じられるでしょうか。
今後の処遇改善への行政、民間双方の取り組みが働きやすさにつながることを願いたいものですね。

保育士の処遇が低いことは、保育士のなり手を減らし、潜在保育士を増やします。
このことが保育士不足の根本的な原因と本質的な問題になっているのです。
保育士という職業は子どもがかわいい、子どもの成長を感じられるなどお金で測れないやりがいというものがありますが、働いている以上生活していくことも必要です。
保育士の心の余裕があると、子どもたちにも余裕をもって関わることができ、より質のいい保育も可能になるのではないでしょうか。

関連記事『保育士給与の希望増加額は約7万円~現場の声から見えてきたこと』

【参考サイト】
厚生労働省「保育士等の処遇改善の推移(平成24年度との比較)」(2017年4月10日)

株式会社ソラスト「保育士の給与を最大 18% ベースアップ、初任給業界トップ水準に~ 優れた人材の確保によるサービスの質の向上を目指す ~」(2014年9月10日)

【参考文献】
前田正子著(2017)『保育園問題』中公新書

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コメント

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    雨ちゃんさん(2016年4月3日)

    低賃金の理由…昇給率が低いことに加え、スタート時の賃金がそもそも低いこともあるのでは。

    公的資金が運用費に充てられているからベースアップは難しいとのことですが、それでは公務員など保育士や介護士以外の職で公的資金を運用費に充てている職業の昇給率も同様に低い?「公務員の低賃金問題」というのは聞いたことがありませんから、やはりスタート時点が保育士や介護士と比べて高いのだと思います。

    また、運用費は、保護者からの保育料も使われるとのこと。保育士の待遇改善には保育料のUPも必要?しかし私が子どもを保育園に預けていた当時も、自分の給料のほとんどを保育料として払う現実でした。海外の保育に目を向ければ、日本の保育料はリーズナブルな方らしいのですが、実感はできません。保育料のUPで保育士の賃金を上げるのは難しいと思います。

    保育士の賃金は、公的資金による補助額を上げ、スタート時の賃金が平均賃金と同等になることが必要ではないかと考えました。

  2. Smithk914さん(2016年9月26日)

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