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保育士不足の現状②~国の緊急対策案どう考える?~

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いちごいちご

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前回の『保育士不足の現状①~データから見えてきたこと~』に引き続き、今回は保育士不足に対する国の緊急対策案について一緒に考えていきたいと思います。

平成27年11月、”1億総活躍社会”の実現に向け、保育士不足解消などの子育て政策として緊急対策の提言案が掲げられ、待機児童の解消を目指した”待機児童解消加速化プラン”が出されました。

待機児童解消加速化プランでは、平成29年度末までに約50万人分の保育の受け皿を確保するために、必要な保育士の数は9万人と試算されています。また、平成27年度補正予算案に保育人材確保のための取組として約710億円を盛り込み、平成28年度以降に実施する方針です。本格的な運用を前に「保育士の確保が難しい地域に限り」という条件付きで、今年度からすでに基準緩和が認められています。

保育士不足に対する国の緊急対策案の概要

・朝夕の保育士配置要件の弾力化
・保育補助者の雇用による勤務環境の改善
・多様な担い手の確保
・資格取得に向けた支援
・離職した保育士の再就業支援
・事務の簡略化と業務の効率化の推進
・保育士の再就業支援

上記は”1億総活躍社会”緊急対策の提言案に記載されている表現です。具体的にどのような内容が提言されたのかを見ていきましょう。

保育士定数の緩和~朝夕の保育士配置要件の弾力化~

夕保育士不足対策_朝夕保育士配置要件

“朝夕の保育士配置要件の弾力化”とは、朝夕の時間帯に、認可保育園では保育士の数が最低でも1施設あたり2人を下回ってはならないという省令を緩和し、児童数が少ない時間帯には資格保有者が1人常駐した上で、もう1人は無資格者でも対応可能としたものです。

保育士の視点から考える

朝夕は子どもの受け入れや申し送りなどの煩雑な時間帯であるとともに、夕方は子どもの事故が最も多いとされる時間帯です。安全面の配慮や事故防止の観点からも、対策を練る必要がありそうです。保護者支援の観点からも、貴重なコミュニケーションの時間であり、家庭保育への充実したサポートにもつながるため、保育士の配置要件については現場の実情に応じて、さらなる対策を講じなくてはならないのではないでしょうか。

無資格者の保育~保育補助者の雇用による勤務環境の改善~

夕保育士不足対策_無資格者

“保育補助者の雇用による勤務環境の改善”とは、保育に携わることができる者として、保育士以外にも「保育施設などで十分な業務経験を有する者・子育て支援員研修を修了した者・家庭的保育者」のいずれかの条件を満たした者を雇用できるよう、規制を緩和した取り組みです。

保育士の視点から考える

前回の記事で「保育士の資格・専門職について」お伝えしました。現在どの保育所でも保育補助職員が活躍しており、子どもへのあたたかな関わりや適切な援助をしてくださる方もたくさんいらっしゃいます。

しかし、保育補助者はあくまでも無資格であるということを頭に入れておかなくてはいけません。それは差別ではなく有資格者と保育補助職員との責任の重大性は違う点を理解しなくてはならないからです。

万一の不測の事故や病気など、保育士として応急処置や判断が必要な場面は多く、命を預かる重大な職務であるからこその専門性が必要になります。また、通院の付き添いや事後報告、謝罪説明など、現場で実際に責任を負うのは正規職員である保育士です。

保育士は、子どもへの遊びの提供・声かけなどごくありふれた場面においても、専門的な知識と技術に基づいて、個々の発達に合わせた配慮を実際の保育現場で行っているのです。この専門性を習得し資格を有した保育士と、保育補助者との違いが、同じように括られてしまわないことを願います。

幼稚園・小学校・養護教諭の代替保育~多様な担い手の確保~

夕保育士不足対策_小学校教諭

“多様な担い手の確保”とは、すべての時間帯において、保育士と近接する職種である幼稚園教諭や小学校教諭、養護教諭を保育士の代替として検討したものです。

幼稚園教諭は3~5歳児、小学校教諭は5歳児を担い、養護教諭は対象を定めていません。保育士配置人数の3分の1を超えない範囲で代替可能となっています。

保育士の視点から考える

各教諭のそれぞれの専門性が異なる点を、一括りにしてしまうことへの疑問を感じます。

保育園では自分の担当クラスだけでなく、職員が足りないクラスへのフォローに入ることは日常的にあります。そのため、幼稚園教諭や小学校教諭が現場に入り書類上職員数は確保できたとしても、実際には、年齢により見られる範囲が決まってしまうので、保育士不足は解消されない結果につながることが予測されるでしょう。

また、前回の記事で”保育士の賃金”について、保育士と小学校教諭との間では格差があることをお伝えしました。

実際に低賃金で働いても良いという小学校教諭の方がどのくらい出てくるのか、同じ保育所で働く職員であっても、保育士と小学校教諭とで賃金格差が生じるのか、そのあたりにも保育士の専門性に対する評価が改善されていく必要があるように思います。

▼前回の記事から『保育士の賃金(年収比較)』
保育士不足の原因『保育士の年収比較』

※画像をクリックしたら拡大します。

保育士試験の回数増加~資格取得に向けた支援~

夕保育士不足対策_保育士試験年2回

“資格取得に向けた支援”とは、都道府県が原則年1回行う保育士国家試験を、年2回行えるようにした制度です。

保育士の視点から考える

資格取得のチャンスが増えるという面では期待ができます。しかし、国家試験を行う際にかかる人件費などの負担が倍になるという点において、効果が疑問視される声もあるようです。

保育士になるために、養成校を卒業するか試験を受験するかが選択できますが、実際には試験の合格率は例年11~14%と難関試験になっているようです。

特に試験では、保育所実習が必須ではないので、現場の実情を知る機会も少ないでしょう。資格を取得するだけでなく、現場で働こうとする意欲や期待を持てるような環境、早期離職にならないような環境を整えていかなければならないのではないでしょうか。

貸付制度~離職した保育士の再就業支援~

夕保育士不足対策_貸付制度

再就業支援の1つとして貸付制度が大きく分けて2つあります。

①就業準備金の貸し付け
保育士として就業するための準備資金として1人あたり15~20万貸付する制度で、2年程度働けば返済が免除されます。

②保育士資格取得希望の保育補助者を雇った保育所への貸付
保育士資格の取得を目指す職員を保育補助者として雇った保育所に対し、1人あたり300万円程度を3年間貸付する制度です。雇われた人が3年以内に保育士資格を取得した場合、返済が免除されます。

保育士の視点から考える

“就業準備金の貸し付け”では、あくまでも”貸付”のため、2年程度働けない職場環境だった場合や元々の給与が低かった場合、そこからの返済は困難な可能性があるので、基盤となる給与の保障の対策が必要でしょう。

また、保育士資格取得者を雇うことへの補助金が300万円あるならば、現役の保育士の給与の改善にあてて欲しいという声もあり疑問が残る対策だと感じます。

事務作業の効率化~事務の簡略化と業務の効率化の推進~

夕保育士不足対策_事務作業の効率化

“事務の簡略化と業務の効率化の推進”とは、事務作業を効率化するためのソフトの導入などにかかる費用を一部助成するものです。

保育士の視点から考える

子どもと遊ぶ、衣食住の世話をする、などのイメージが強い保育士の業務ですが、実際には日案・週案・月案・保育要録・日誌・連絡帳・クラスだより・学年だよりなど日々山積みの書類と向き合う時間のなさと戦っています。

長時間保育が増え、常に子どもの保育をしながら事務への時間を作り出すことも難しい中、効率化・簡略化されることは望ましいことでもあるので、今後の動向に期待できるのではないでしょうか。

保育所優先入所~保育士の再就業支援~

夕保育士不足対策_保育士の再就業支援

“保育士の再就業支援”とは、就業した保育士の子どもが優先的に保育所に入所できる仕組みを作り、保育料も3~4万円を上限に半額程度免除するという支援策です。

保育士の視点から考える

保育所の保育時間も多様化しており、私自身実際に核家族で子育てをしながらフルタイムで保育士として働くことが困難だったため、保育所に優先して子どもを入れられることは非常に助かる制度になるだろうと思います。

しかし、早番・遅番などの不規則な勤務やイベントの休日出勤など、フルタイム保育士の勤務には子育てとの両立が難しい部分が多くあるのも事実です。入所後も育児休暇や時短勤務などのサポートがあると、より働きやすくなるのではないでしょうか。

そのためにも、有資格者による短時間勤務の柔軟なシフトの組み合わせも大切で、さまざまな世代や立場の潜在保育士が、部分的な時間の保育をサポートしていけたら、現場側も、働きたい潜在保育士も、互いのニーズが合致する可能性が出てくるかも知れません。

まとめ

夕保育士不足対策_確保

保育士不足に対する緊急対策案、皆さまはどのように感じましたか?捉え方はさまざまで、疑問に思ったことなど、たくさんの意見があるのではないかと思います。

保育士の再就業支援や潜在保育士の発掘など、即戦力として働くことが可能な人材の発掘にすぐにでも結びつきそうなもの、現場の中で混乱が生じそうな気配のあるものさまざまですが、このような対策案がすでに動き出している現状を、現場の保育士の方々により分かりやすく知っていただき、より良い保育につなげるために議論したり対策を講じたりしていただけたらと思っています。

子どもを育てていく社会の問題や不安・疑問などを言葉にしてみることで、より良い改善策が生まれてくることがあるでしょう。

保育士も、潜在保育士も、子どもを育てる親も、子育てをしていないどんな世代の人にも、社会で子どもたちがより良く育つための最善の策を一緒に考え、声のキャッチボールができるような社会になることを願っています。

≪参考文献≫
『厚生労働省:保育士等確保対策検討会』
『厚生労働省提出資料』
『2015(平成 27)年度 国の補正予算の状況について』

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コメント

  1. プロフィール写真

    ホエールさん(2016年3月8日)

    国の対策、、、
    はっきりいって、馬鹿げているとしか感じません。
    なんで、ここに行き着くのか、わかりません。
    頭のいい方が集まってるはずであろうところなのに、憤り隠せない保育士だらけだと思います。

    ここでの発言が、何らかの形で、役に立ったらと思い発言しました。

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    たこぼうずさん(2016年3月11日)

    とても分かりやすくて勉強になりました。
    「保育士の専門性に対する評価」は、特に心に響きました。まだまだ保育士の専門性は世の中で確立されていない部分も多いと思います。
    「正解がない」と言われ、個々の保育士によって価値観が違う以上、なかなか確固たる専門性を打ち出すのは難しいだろうなと思っています。
    ただプロである以上、専門性を確立することは大事ですし、専門性が世の中に認められていくことで保育士不足の解消にも繋がるのでは私自身は考えますが、どうしたらそれが実現できるのかはなかなか思いつかず日々考えています。
    ぜひ機会がありましたら、「保育士の専門性」について、いちごさんのお考えをお聞きしたいなと思いました。貴重な記事をありがとうございました。

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    べぇ先生さん(2016年4月4日)

    国の対策。本当に何を考えてるのか。
    保育士が不足→潜在保育士がいるけど働かない→じゃー保育士じゃ無い人を働かせよう!ってどういう思考回路?

    馬鹿にしてるとしか思えない!

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    ともさん(2016年4月12日)

    本当に本当に意味が分からない。国の対策。
    子どもの受け入れ人数増やす⁈ばかじゃないの。
    余計室内事故増えるし‼︎
    無免許の人働かす?じゃぁ専門じゃなくて、無知識でもいいの?ばかみたいに実習行かせて貰って動き学んで。子育てとは違う‼︎見る観点が違う‼︎
    穏やかな現場じゃなくて普段の現場見てよ‼︎どんだけみんな日中走り回るか‼︎
    昼も昼でないような感じだし。

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    みぴょんさん(2016年6月20日)

    潜在保育士を復職させるにはどうするかを考えるべきで、無資格の人を雇えるようにするとか、受け入れ人数を増やすとか、見当違いもいいとこです(>_<)
    子どもがいても、働ける環境があれば、結婚して子どもがいる保育士も働きやすくなるのでは?

  6. ま~りんさん(2016年11月21日)

    小学校の先生が赤ちゃんの保育なんてできるわけないです。
    子育てとは全く別物です。
    子供の多い時間帯に資格をお持ちで子育て経験豊富な主婦のパートさんを雇うことでも人手不足は解消できます。
    拘束時間の調整も重要です。

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この記事を書いた人

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発達支援の保育の仕事をさせていただきながら「メモリープランナー」として、地域のママたちが子育てを楽しめるようなイベントを企画したり、場所作りをしたりしています。 イヤイヤ期真っ最中の2歳児と反抗期真っ只中の中学生の2人の子育てにも日々奮闘中です。→ブログはこちら
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