【2020年版】学童・放デイのリアル~給料からやりがいまで現場の声を集めました~


子ども達の居場所として重要な役割を果たす「学童保育」。
小学校の急な休校、そして緊急事態宣言下でも保育園と同じく学童保育の継続が求められました。
子どもの成長を間近で感じられるやりがいある仕事である一方、なかなかこの仕事の重要性を理解されづらい部分もあるのではないでしょうか。
今回は学童保育・放課後等デイサービスの現場で働かれているみなさまに「仕事のやりがい」から「大変なこと」まで率直な声をお聞きしました。
この機会に「学童保育」の現状を知っていただけたら嬉しいです。
●調査期間:2020年5月15日~5月31日
●有効回答数:63件(北海道・東北/関東/東海・中部/関西/中国・四国/九州・沖縄)
※以下、放課後児童健全育成事業を総称して「学童」、放課後等デイサービスのみを指す場合は「放デイ」と表記します。
放課後の世界はバリエーション豊か
今回の調査であらためて分かったことは、放課後の事業はきわめてバラエティに富んでいることです。
まずは確認したいのは放課後事業の運営主体は大きく、公営(公立)と民営(民間)に分かれていること。
- 【運営主体】
・公立 自治体が運営
・民間 社会福祉法人、株式会社、有限会社、合同会社、NPO法人、保護者会などが運営【ポイント】
・放課後等の「保育に欠ける」児童が主な対象
・「放課後児童健全育成事業」に基づき厚生労働省が主導・管轄
・文部科学省が主導する「放課後子ども教室」もある
児童福祉法に基づいており、補助金を運営資金にしている所もあれば、+αのサービスを提供しながらやや高めの保育料を設定しているところもありますね。
たとえば、プログラミング教室や塾の要素が強い放課後預かりサービスを展開している「学童」もあります。
また、「放課後児童クラブ運営指針」など一定の基準はありますが、各自治体・事業所による裁量が大きく、学童・放デイによってかなり違いがありそうです。
今回の調査では公立・民間問わず、全国の「放課後に子ども達と関わっている方々」に広くご協力いただきました。
「放課後等デイサービス」とは?
今回の調査では「学童保育」と共に「放課後等デイサービス」で働いている方も調査の対象としました。
放課後等デイサービスは、障害のある6歳~18歳までの就学児が、放課後や夏休みや冬休みなどの長期休暇中に利用する福祉サービスです。
学校外で集団生活をする機会を設けたり、子どもたちの居場所をつくったりすることで、障害のある子どもと、その家族を支えるためのもので、「障害児の学童保育」とも呼ばれています。
「保育のお仕事レポート」より
役割が「子どもの最善の利益の保障」「保護者支援」などと学童と重なる部分も多いです。
緊急事態宣言下でも学童と同じく、開所が求められたことからも今回のアンケートにもご協力いただきました。

ぴよまる先生
放課後等デイサービスの従事者も一定の条件を満たしていれば、新型コロナウイルスによる慰労金が支給されるようになったようです……!
リアルな学童の働き方
今回お答えいただいたみなさんの概要をお伝えします。
通常は子ども達が学校から帰ってきてからが忙しい時間帯です。
そのため、パートさん・アルバイトさんとしての働き方のニーズが伺えます。
今回のアンケートでも3割以上の方がパートさん・アルバイトさんでした。
気になるお給料事情
気になる学童のお給料。
保育士に負けず劣らず「給料が低い」というイメージもありますが……
地域・学童の形態によっての差が大きく、平均値を出しにくいのでここでは、一例をお伝えします。
傾向としては、やはり都市部の方が給料が高いようです。
一方でフルタイムの正職員でも月給12万円台という衝撃的な結果も。
また所有資格や役職(管理職)などによって給料アップも見こめます。
たとえば、習い事事業をメインとしている学童で働かれている方の例では月給25万円と比較的高額な回答が。
スポーツや英語など得意分野をもっている人はそのスキルを活かすこともできそうです!
しかし全体として「子どもの安全・命を守るという責任に対して給料が安すぎる」という意見は多く聞かれました。

ぴよまる先生
「ただ遊んでいるだけ」という世間のイメージもあるのでしょうか?
元気いっぱいで多感な子ども達と関わるのは専門性の高い仕事だと考えます。
保育士のように処遇改善の動きはないのでしょうか……?
緊急事態宣言下は開所?閉所?
緊急事態宣言下でも学童を開き続けた(「通常通り開所」「来所自粛のお願いをしつつ開所※条件付きで一部受け入れ」)との回答は8割以上にのぼりました。
助けられた家庭はきっと多かったことでしょう。
コロナ禍において「3密が避けられない状況で困った」「いつも以上に子ども達の感染症予防に気を使った」「自身の感染リスクに怯えながら働いた」という声が目立ちました。
そのような中でも「開所時間の短縮」や「休校中の小学校の敷地を借りて少しでも密集状況を回避する」などの対策をとり、予防に努めた工夫も聞かれました。

ぴよまる先生
アフターコロナの時代、「子ども達の日常」も守りつつ、「働く人の安心・安全」のために考え直さなければなりませんね。
学童で働こうと思った理由は?
この仕事を選んだきっかけや志望動機もみなさんにうかがったところ……
「子どもが好きだから」が圧倒的多数の回答でした!
実際の学童支援員さん達の声をみてみましょう。
意外と多い!? 周りからの影響

地元の小学校でPTA役員をしていた関係で、声がかかった。

事業所増設に当たり、「教員免許を持っている人が必要」と声をかけられた。
また、「働く時間や条件がライフスタイルにマッチした」と言う方もいました。
アルバイトから、夢を叶える

学生の頃にアルバイトをさせてもらい、子どもの成長に関わる楽しさを知った。

将来保育士を目指しているため
「障害児とちゃんと向き合いたい!」放デイの道に

幼少の頃に福祉サービスを利用したことがあり、障がい児福祉に興味を持つようになった。子どもが好きで、関われる職場に就きたかった。

特別支援学校に務めていましたが退職しました。また特別なニーズのあるお子様と関わりたいと思ったため。
資格を活かして♪ 保育士からジョブチェンジの可能性も…

介護福祉士、幼稚園教諭、両方の資格と経験を生かせる仕事だと思って。

保育園に勤めていて併設されているので、配属された
こんな素敵なエピソードもありました……!

中学生の頃ずっと引きこもりだったためそれを克服するため最初はボランティアで活動していました。
そしてボランティア開始から2ヶ月後に「アルバイトをしないか?」と声をかけられ始めました。
今は子供たちと色々な話をしたりして楽しいという気持ちです。
知ってほしい! 学童・放デイの問題
せっかく子どもと関われる仕事に就いたのに、「学童指導員が辛い・ 辞めたい」という声もあとを断ちません。
「仕事の大変さ・今困っていること」を聞いた質問には、悲痛な声が届きました。
やっぱりヘンだよ!働き方や基準(ルール)

人手不足と資格制度の脆弱さから、誰でも入職できてしまうのが現状です。職員間のレベルの差が激しいことが困ります。

施設規模や職員数に見合わない多くの児童を詰め込まれている現状であり、子どものストレスも大きい。職員も事故を防ぐ為に奔走する時間が長くなるため、学童保育に本来求められるような十分な保育ができない。
不安定な雇用制度や責任に見合わない低い賃金、やり甲斐搾取を当たり前とする風潮。それらが長年放置され、今も改善の兆しが見えない。

大変さの割には給料が安い。保育士はその意義などが見直されたが、放課後支援員や学童職員はまだだと思う。学校や保護者からも軽んじられるときがある。
コロナ禍でより大変な状況に

まず部屋が狭い。コロナ関係で話題になりましたが三密は避けられない状況。どうしようもありません。

緊急事態宣言が解除されて、参加児童が、多くなり、密集密接が避けられなくなったことと、市から分けてと言われるが、分かれると職員が足りないので分けられないことです。
個の特性や学童期の子ども達と関わる難しさ

ひとつ困難が起こりパニックになったときの原因を解明すること。これと言った理由が無く突発的な事も多いのでそれに対する対応。ひとりひとり違うので難しいです。

子ども同士のケンカになった時の言葉のきつさ、手や足が出てしまう事
また、新卒で学童に入職したものの、人員のゆとり・教育の機会が少なく「子どもとの関わり方が分からない」と悩む方も……。
子どもだけじゃない! 関係者との板挟みに悲鳴

役所や上司が保護者の要求を最優先し現場の声を一切無視する。

指導員の想いがなかなか届かない時、保護者との子どもに対する考え方の違い
上司だけでなくヨコとタテの関係、行政・保護者などとの板挟みになることも「辛い」と感じる一因になっています。
嬉しい・やりがいを感じる時は? 誇りをもって子ども達と向き合えるように
こちらも「子ども達の成長が嬉しい!」と答えてくださった方が多数。
学童保育のやりがいを生き生きした様子で伝えていただきました。

卒業した子どもが訪ねて来てくれること

就労に伴う放課後の留守家庭の子どもたちの育成支援ができることと成長を見ることができること

保育園や幼稚園以上のちいさな「できた」を喜べる。(障害があるが故の)

子どもの心に触れられた時。悪い子という子は1人もいないということに気がついたとき。

支度もそこそこに、今日あったことを話してくれる子どもの話を聞いてる時

将来とか未来とかのためではなく、「今、ここ」を全力で生きているのが子どもたちだと思います。彼らといる一瞬一瞬すべてが大切で、その瞬間を共にできることがやりがいです。
知ってほしい!学童の大切さ
最後に「学童について知ってほしいことや、仕事に対して考えていること」をうかがいました。
ここでご紹介できるのはほんの一部ですが、全国の学童で働かれている方がどのような思いを抱えているのか、ぜひ思いを寄せてみて欲しいです。

どの子どもにも良いところがあり、それは長時間一緒に過ごしている他人にしかわからないため、誇りを持ち、専門性を大切にして欲しい。

自分が好きで選んだ仕事ですが、支援する側もごく普通の人間です。またこの業界の一部では利用者さん至上主義とでも言うか、ひと昔前の根性論が根強く残っています。
もちろん利用者さんの個性やニーズを大切にし寄り添う事も大事ですが、支援者も大事に育てていかなければこの福祉を担う人はどんどん減少し、やがては破綻しまうのではないか?と不安に感じます。
良い支援をと願うなら、意欲・前途あるスタッフのやる気を削ぐ事がないよう見守って頂きたいです。

新型コロナウイルスの対応は直前に決まることが多く、本当に大変でした。
運営主体からは“開所”としか伝えられず、どのように対応したらいいのかもありませんでした。
そんな中、どのようにして開所していくのかを父母会の役員さん達と考え、対応していました。
対応に不満のある方もいたかもしれませんが、それでも皆さん協力して下さって開所し続けることができました。
保護者の方からは、職員の体力等を気遣ったお言葉や、手伝えることがあれば言ってください等のお声をいただくこともあり、本当に感謝の気持ちでいっぱいです!
今後もどうなっていくのか不安なところではありますが、保護者の皆様と力を合わせて乗り越えていきます!!

学童保育は、家庭でも学校でもない不思議な空間で、ここでしか見せない子どもの顔があることを知って欲しい。小学校では優等生なのに、学童でははちゃめちゃやる子どもや、家庭ではものすごくいい子でも、学童でストレス発散している子がいること。ただ子供を預かって、遊んでるだけの施設だと思われてる方が多い気がするので、学童の実情を知ってもらいたい。正社員がものすごく少なく、立場がとても弱いのに、責任だけがとても重い。

子ども達には勉強以外のことで様々な体験をして、自分のこと、自分の身の周りにいる他の人のことを考えられるように成長して欲しいと思いながら日々仕事をしています。
他の人を思いやるというのは大人でも難しかったりしますが、子どもたちには学童という場で学んで欲しいです。
子どもは、大人があーしろこーしろと言ったからといって成長するものではなく、大人から言われたことを子どもなりに理解して実行するから成長するんだということを私は指導員になって学びました。
子どもの成長の助けになるような保育をしていきたいと思っています。
ほいくらいふ編集部より
まずはアンケートにご協力いただきましたみなさん、ご協力ありがとうございました。
普段は「保育士さん・幼稚園の先生」を対象としている「ほいくらいふ」ですが、あらためて「学童保育」と未就学児の「保育」の問題は重なることが多いと感じました。
学校でも家でもない放課後の時間。
学童・放課後等デイサービスも大切な子どもたちの育ちの場です。
子ども達もそこで働く大人も健やかにのびのびと過ごせるように。
みなさんと一緒になって考えていきたいと思います。
参考文献
- 厚生労働省「放課後児童健全育成事業について」(2020/06/19)
- 文部科学省「放課後子ども教室推進授業について」(2020/06/19)
- 厚生労働省「放課後児童健全育成事業について」(2020/06/19)
- 放課後児童クラブ運営指針解説書(案)作成検討委員会委「放課後児童クラブ運営指針解説書」(2020/06/19)
- 厚生労働省「放課後等デイサービスガイドライン」(2020/06/19)
- 厚生労働省「新型コロナウイルス感染症防止のための小学校等の臨時休業に 関連した放課後等デイサービスに係るQ&Aについて(4 月 13 日版) 」(2020/06/19)
- 厚生労働省「新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止に配慮して子どもの学習・生活支援事業を実施するためのガイドラインについて」(2020/06/19)
- 保育のお仕事レポート「放課後等デイサービスとは~働くうえで必要な資格・仕事内容・学童との違いは?~」(2020/06/19)
- 厚生労働省「令和2年度厚生労働省第二次補正予算案(参考資料)」(2020/06/19)
- 放デイラボ【動画】「【速報】障害福祉サービス施設・事業所等の職員への慰労金支給が決定!(令和2年度 第二次補正予算案)」(2020/06/19)
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