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【第2回】学童保育で働くきしもとたかひろさんに聞きました~保育業界のしんどさ、どう変えていく?~

きしもとたかひろさんインタビュー 保育士辞めたいを考えるTOP
ほいくらいふアプリが使えるようになりました!
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社会の周辺に置かれがちな「保育」、さらにその外側におかれがちな「学童保育」について、きしもとたかひろさんにほいくらいふ編集部がお話を聞きました。

今回のテーマは「保育業界のしんどさ、どう変えていく?」です。
また、SNSを使って業界を変えることはできるのでしょうか?
子どもや保育は好きなのに「保育士辞めたい!」「なんかしんどい」と思っている方にこそ、読んでほしい内容です。

「#保育士辞めたい」に見る、なんでこんなにしんどいの?

はきしもとさんが保育の理想と現実に悩まれた過去があり、未開拓の「学童保育」から業界を変えていこうと決心されたと伺いました。

ぴよまる先生
編集部

今回の取材をお願いするにあたって決め手となったのがこちらの記事でした。

業界を変えるための論考noteのキャプチャ

「業界を変えるためにできることを真面目に考えた。」より

ぴよまる先生
編集部

保育業界全体に課題意識をおもちなのが伝わってきました。
一方でSNSでも「#保育士やめたい」というタグが1日500件近くつぶやかれています(業者やbotによるもの含まれています)。
これは個人の問題というよりも、「業界の問題が大きいぞ」と思っているのですが……。

  

人手不足?給料? 学童をとりまく4つ+αの問題

ぴよまる先生
編集部

そこで、支援員をされているきしもとさんが考える学童保育の問題についてお聞きしたいです。

きしもとさん:
アンケートの一部も見せてもらいました。
ここにあるように「責任の割に低賃金」「社会から認められていない気がする」というのは私も感じています。

学童保育の課題をちょっと整理してみると……

学童保育をとりまく課題の一例

きしもとさんのお話をもとに編集部作成

きしもとさん
きしもとさん

う~ん。挙げたらきりがないですね。

コロナ禍で明らかになった「学童保育」の問題点

ぴよまる先生
編集部

今までつもりに積もっていた課題がコロナ禍で噴出した印象があります。人命に関わる責任の重さや疲れと相まって、支援員さん達の不満にもつながっているような。

きしもとさん:
あえて今回の新型コロナウイルスの騒動にまつわる問題を挙げるとすると、休校措置を受けて学童保育が医療従事者やインフラ業務従事者の子どもの受け皿となっているかのように見られますが必ずしもそうではないということ。

ぴよまる先生
編集部

……と、言いますと?

きしもとさん:
単純な待機児童問題もありますが、そもそも保育料が高くて入れないという方たちもいます。

学童保育はほとんどの事業所の保育料が一律で、ひとり親家庭への補助や減額等がないところも多くあり、それが原因で学童保育への入所を諦める方もいます(自治体や事業所によって違いはあります)。

ぴよまる先生
編集部

保育所と比較すると、福祉的な保障(セーフティネット)の役割を果たせていないということですね。

きしもとさん:
今回の休校で学童保育所が「一人で家にいる子どもの受け皿となる」という役割を担いましたが、社会福祉としての受け皿となっていたかといえば疑問は残りますし、サービスを受けている子どもだけでなく広く児童の福祉を保障するためには改めて社会的な役割と仕組みを見直さなくてはならないと感じます。

ぴよまる先生
編集部

より大きな枠組みで問題を考える必要がありますね。

保育業界を変えるためのヒント「慣習からその人にとっての幸せに比重を置く」

ぴよまる先生
編集部

では、保育・教育業界全体を「良くしていきたい」というのはほいくらいふの思いでもあるのですが……
「どこから始めたらいいのだろう?誰に対して、どうアプローチすれば良いのだろう?」ということはずっと考えています。
一保育者ができることはありますか?

きしもとさん
きしもとさん

noteにも書いた図に表している通り「それぞれの立場」で変わってくるものはありますね。

「業界を変えるためにできることを真面目に考えた。」より

きしもとさん:
スタートは「目の前の仕事をする」ですね。
そこから先は、個人の考え方・経験や立ち位置、園が対話できる環境か、自治体の姿勢などで何ができるか変わってきますね。

あえて「できること」を言うとすれば、今までの価値観や習わしに重心を置くのではなく、子どもや保護者や保育士の福祉(その人にとっての幸せ)に比重を置くだけで大きく変わると思っています。
明らかに無駄でしんどくて必要がないものでも「決まりだから」と変わろうにも変われない現場は多くありますので。

ぴよまる先生
編集部

どうしても「福祉、教育の仕事だから」と献身的な聖職者像を世間などから求められることもあります。保育者も含めた「その人にとっての幸せ」を追い求めて良いというのは、真面目でしんどい思いをしてしまう人ほど勇気づけられる言葉です!

SNSで発信するワケー「現場の人たちが困っているのだ」の視点

ぴよまる先生
編集部

では、SNS等でイラストとことばを発信するようになったきっかけはありますか?


▲2017年頃からTwitterをはじめたようです

きしもとさん:
Twitterで発信し始めたのは、テーラー(洋服の仕立て屋さん)の友人の一言がきっかけでした。
普段から「保育の業界を良くしたい!」という話をしているんですが、ほとんど人からは信じてもらえず当り障りのない相槌(あいづち)を打たれるか、でなければ「お前には無理だ」と笑われるんですが、その友人は真剣に話を聞いて答えてくれるんです。

ぴよまる先生
編集部

すてきなご友人ですね。

きしもとさん:
するとその友人が「おれは保育のことわからないけれど、応援するよ。これからはグローバルの時代なんだから、業界を良くしたいなら世界に発信しなきゃ。Twitterとかあるんだから」というようなアドバイスをくれたんです。

彼はドイツでテーラーの修行をしていて年に一回しか日本に帰ってこないんですが、「一年後にはビッグになっていろ」というようなノルマを与えられて始めました。

ぴよまる先生
編集部

職業も視点も異なる方ならではの面白い考えです!

きしもとさん

それから一年間フォロワーさん20人くらいで発信というよりは自分の視点をメモするような活用方法をしていました。

「役に立つ」「即効性」のあるマンガで伝えたい保育の大事なこと


▲いわゆる初めて「バズった」マンガ

きしもとさん:
で、一年後にその友人が帰ってくる時期にたまたまマンガを発信したら多くの方に見ていただくようになったんです。

学童保育の現場での実践には手応えを感じていたものの、マンガを描く前は誰の目にもとまることのないアカウントでしたから、フォロワーの数と質の高い実践は関係ないよなあと今でも思っています。

よくインフルエンサーと間違われるんですが、ボクはあくまでも現場で実践している保育者として発信しています。

ぴよまる先生
編集部

現在はフォロワーが1.5万人超えと……十分「インフルエンサー」と言われるお立場ではあると思うのですが。(笑)

SNSを組み合わせて「小手先にならないよう」ていねいに伝えていく

ぴよまる先生
編集部

きしもとさんの発信で珍しいなと思うのは、「学童」従事者からの発信であること。
そして非常に王道な保育観。「保育所保育指針」の言葉を借りれば「個別的」(一人ひとりに合わせる)「応答的」(受け止めて、自分なりの考えを返す)姿勢がみえます。

きしもとさん:
ボクが発信している保育は自分で編み出したものではなく指針にも書いてあるような王道のはずです。
現場では「理想と現実は違う」とはねのけられて理論よりも習わしのようなものが優先される傾向があると感じています。
その王道を理想論のままで終わらせたくはないという思いで実践に落とし込んだ方法や転用できる視点を見つけていきたいと思って保育したり発信したりしています。


▲絵とコラムはInstagramにもまとめられています

ぴよまる先生
編集部

そこでマンガという表現方法にも至ったのですね。

きしもとさん
きしもとさん

もともとマンガを描くのも絵を描くのもあまり好きではないのですが。

ぴよまる先生
編集部

なんと!? スケッチも水彩画風のイラストもとても魅力的です。

きしもとさん
きしもとさん

ありがとうございます。

マンガはわかりやすくて伝わりやすく、実践や現場で困っている人たちの役に立つ即効性があります。
具体的に、けれど本質から遠ざからないように抽象的にして。誰もが応用・実践できるように書いています。

ぴよまる先生
編集部

マンガや短文中心のTwitterやInstagramに加え、長文メインのnote(ブログ)も書かれていますよね。

きしもとさん:
マンガで描くような事例だけでなく、全体として一歩進めるには理論や思考を深めていくことが保育や教育には必要だと考えています。
それを共有できればと思い文章をnoteに投稿しはじめました。

マンガとのギャップが大きいかもしれないけれど、小手先にならないように理論を伝えたかったんですよね。
そこから、子どもを取り巻く世界が良くなっていくきっかけができていくんじゃないかと。

マンガが抽象化した方法論、noteが理論や思想だとすれば、連載しているコラムの内容はマインドって言うんですかね、保育や子育てに向き合う心持ちみたいなものを自身の経験から書いている感じです。

“みんな”ではなく“ひとりひとりに”伝える

ぴよまる先生
編集部

保育指針に書かれているような「正しい」保育観を広めようとしていた頃から

日々子育てや保育に悩んでいる人たちがいて、どうにかそこから抜け出したいと追い込まれている。そんな人たちにとっては、たとえ小手先の方法論であっても救いなんですよね。
(中略)
自分は「そうじゃないよ」と批判するだけの人間になりたいのか?と考えました。違うよね、と。その困っている人たちに「こんなやり方があるよ」「こうしたら楽になるよ」って伝えることじゃないのか。それも、小手先の方法ではなく、ちゃんと専門性のある方法を。
「批判しそうになったら、粛々と自分のできることをする。」より

私と同じように保育の現場で思考錯誤している人に向けて、保育現場で出会う保護者さんのように子育てで悩んでいる人に向けて、だれかひとりでもなにかのヒントにしてもらえればと。
「批判しそうになったら、粛々と自分のできることをする。」より

※原文ママ、太字は編集部によるもの

ぴよまる先生
編集部

このように考え方が変わり「“みんな”ではなく“ひとりひとりに”伝える」ようになったのですね。

育児相談に答えたnoteのキャプチャ

『うちの子は10秒もじっとできないのですが、何か良い方法がありますか?』より


▲育児のお悩みDMに答えたnoteがきっかけで子育ての連載も始まったようです

きしもとさん:
大きいのは、業界の問題を「良くないこと」としてではなく、「現場の人たちが困っているのだ」という意識で、困りごとを解決していこうとなっていきました。

結局は保育や支援と一緒なんです。

ぴよまる先生
編集部

ネットを通しても、その向こう側にいるのは「一人の保育者」「一人の親」さらにその先に「子ども達」がいるのですものね。
その為に何ができるのか、自分の立ち位置を見つめ直すきっかけになりました。ありがとうございました!

今回は保育・学童業界全体の話、ネット上の発信のしかたについてうかがいました。

いよいよ最終回の第3回は日々向き合っている保育の現場についてお聞きします。
保育の現場でチームとして働くこと、子どもと向き合うこと、保育業界の希望など次回も盛りだくさんでお伝えします。

きしもとたかひろさんプロフィール

きしもとたかひろさん

関西の社会福祉法人運営の学童保育所で働く保育者。
子どもとの関わりの中で気づいたこと、考えたことをSNSにマンガで発信してみたところ、多くの方の目に留まるように。
Twitterのフォロワー数は1.5万人を超え、保育理論や子どもへの寄り添い方を説いたもnote人気。
現在「grape」にて子育てにまつわる悩みや、子どもとの温かいエピソードを連載中。

◆きしもとさんの情報はこちらから◆
・Twitter @1kani1dai
・Instagram @1ka.ni.1dai
note
・grape 連載コラム

※この記事の内容は2020年6月インタビュー当時の情報です

◆「きしもとたかひろさんへインタビュー」シリーズ◆
第1回:学童保育のお仕事編
第3回:保育の質(子どもとの関わり・チームワーク)編

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 https://houkago.hoiku-me.com/

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