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発達障害をもちながら保育士として働くには?

発達障がい

障害をもつ保育士インタビュー_アイキャッチ

たこぼうずたこぼうず

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広汎性発達障害(アスペルガー症候群、ADHDを含む)をもちながら保育士として働いている”たこぼうず”さん。たこぼうずさんが障害の診断を受けたのは20代の時です。保育士になろうと思ったきっかけは、叱られることが多かったという幼少期の頃に遡ります。

コミュニケーションが苦手と感じながら、人との関わりが密な保育士を選んだのはなぜか。保育士になるまでの道のりや、周りの方に障害を受け入れられるまでの苦悩についてご本人にお伺いしました。

たこぼうずさんの自己紹介はこちら≫『たこぼうずの幼少期と現代』

保育士になりたいと思ったきっかけはある職員の行動だった

障害_就職、保育士_きっかけ

子どもの頃の私は、他の子が当たり前にできることができずに叱られてばかり…。じっとしていることが難しく、よくヤカンを持ちながらクルクルと回っていたので、お茶をこぼすことも多くありました。

ある時、またヤカンをひっくり返してしまい、いつもなら「あーあまた」と叱られていたのですが、この時は通りかかった男性調理師さんが「大丈夫だよ」と声をかけ、床を拭いてくれました。そして、私はその日を境にひっくり返すことはなくなったのです。

そのような経験から失敗を責める大人ではなく、失敗しても「大丈夫だよ」と受け止められる大人になりたいと思うようになりました。ここが私の保育士としての原点だと思っています。

―――ひっくり返さなくなったのは、「大丈夫だよ」と受け止められたことが大きいのでしょうか?

大きいと思います。叱られていた時は、クルクル回るのを止めようと思っても止められませんでしたが、その後は落ち着いてヤカンを運べるようになりました。自分でも不思議です。

―――それからずっと保育士を目指していたのですか?

本格的に保育士になると決意したのは、高校3年生の時です。自分から最も遠い環境に身を置いて自己改革を図ろうと考えた結果「保育」にたどり着きました。私は人とのコミュニケーションが苦手で、高校時代はほぼ周囲と会話せず、学校に馴染めない生徒でした。コミュニケーションをとらずにはいられない環境に身を置くことで、自分のスキルをつけたいと思ったのです。

―――なぜ、最も遠い環境が「保育」だと思ったのですか?

保育は、人とのコミュニケーションが必要不可欠だと思ったからですね。

保育士を目指すことに賛成する人はほとんどいなかった

障害_就職、保育士_反対

―――保育士を目指していた頃の周りの反応はいかがでしたか?

今思うと、賛成する人はほとんどいませんでした。しかし、昔の私はあまり他人の意見を聞かず、自分がこうと決めたら突き進む性格だったので、実習で先生方から「向いていない」「一緒に働きたくない」「男性は必要ない」「もっと別の仕事が良いのでは」と言われることが多くても、めげなかったんです。

―――その後もめげずに、保育の道に進まれたのですね。

学生の時は保育に関して経験もなかったので、反対されることに対してはその通りだと感じていました。それもあり、もっと現場経験を積みたいと思い、自主的に保育園や幼稚園30園ほど実習をさせていただきました。他にも、ボランティア、アルバイト、大学での勉強を積み重ねていきましたね。幼児教育学科では良い友人に恵まれ、本当によく人と話した4年間でした。

保育の道に進むことによって、苦手だった人との関わりも少しずつ克服していったたこぼうずさん。就職はどのように進められたのかもお聞きしました。

就職先に障害を打ち明けるか、打ち明けないか

障害_就職、保育士_打ち明ける打ち明けない

―――就職活動はどのように進められましたか?

幼稚園と保育園、両方の公務員試験を受け、合格発表の早かった公立幼稚園への就職を決めました。

―――就職先が決まってから、障害について打ち明けるかどうか悩まれたのではないでしょうか?

障害があることを自分自身知らなかったので、幼稚園教諭時代は打ち明けていません。幼稚園を退職し転職活動をする時に、かかりつけの医師から知能検査と人格検査を勧められ、診断を受けました。

転職先(現在の職場)では、障害を打ち明けたものの「個性」として認めていただき、障害の特性を生かして働くことができました。しかし、職員メンバーの交代によって職場の雰囲気が変わり、障害をもっていることで困ることが増えたので、改めて障害手帳を取得し上司と数名の職員に打ち明けることにしたのです。

―――打ち明けた時の反応はいかがでしたか?

ピンときていないようでした。「発達障害がある大人がいる」ということ自体を知らない方や、「大した問題ではない」と思う方が多かったです。ただ中には、「だからか~」と私の一風変わった言動の要因が分かって納得していた方もいました。

―――保護者には伝えられましたか?

今のところ保護者や子どもに対して障害が原因で困ることはないので、伝えていません。聞かれれば正直にお答えしようと思っています。

―――障害について打ち明けるか悩んでいる方に、打ち明ける際の注意点やアドバイスはありますか?

自信をもってアドバイスできることはありませんが、私は一度、障害を重く考えずに気軽に打ち明けていこうと思っていました。しかし、今は慎重に打ち明けたほうが良いと思っています。

それは、受け止め方は人それぞれで「力になりたい」「特性を生かしてほしい」と思ってくださる方もいれば、「だから何?」「甘えでしょう」「障害のある人に保育士をやってほしくない」とネガティブな偏見をもつ方もいることを知ったからです。ただ、信頼している今の上司には打ち明けて良かったと思っています。

保育士として実際に働き始めて…

障害_就職、保育士_幸せ

―――実際に働き始めて大変だったことはありますか?

子どもや保護者と接すること、業務そのものは問題なかったのですが、大人数での雑談や飲み会、休憩室での時間、ルールが曖昧な職場環境に対応するのが大変でした。雑談や飲み会が苦手な理由や具体的に困ったこと、難しいと感じる部分での解決方法については、前回の記事にも記しています。

前回の記事はこちら≫『保育でも生かせる!障害者にとっての視覚支援』

―――前回の記事でも困ったことへの解決方法が書かれており、働く環境を良くするためにたくさんの努力をされたのだと感じました。

大人数の雑談に関しては、以前は適応できるよう努力をしていましたが、休憩時間には休憩室を使用せずに外出する、飲み会には参加しないなど無理に頑張ることはやめました。このあたりは、ワークライフバランスや労務管理がよく機能している職場を選んだことで実現が可能になったと言えます。

私自身も主任保育士として、人員配置や職員の働き方をリードし、残業はせず持ち帰り仕事はしないなど、業務を就業時間内に完遂させる働き方を上司とともに追究してきました。

働き方についての記事はこちら≫『保育者のワークライフバランス』

―――働き始めて良かったことや嬉しかったことお教えください。

障害の特性を生かして働けていた時期は、やりがいがあり充実していました。特に、タイムマネジメントやルールの徹底、生産的な打ち合わせのリード、人員配置などの労務管理業務は自分に合っていましたね。

現在は志望していた事務職を行うことができ、好きなパソコンの仕事に没頭できることが嬉しいです。表立った現場の保育は自分よりも適任の先生方にお任せし、事務面から職員や子ども、保護者の皆さまのフォローをしたいと思っています。あとは、この仕事をしたことで、妻と出会えたことが良かったですね。

―――最後に読者の皆さまにメッセージをお願いします。

障害をもちながら社会生活を営むことは、難しいことも多いかと思います。どうしても障害をもつことで困ったり、不利になったりすることはあるでしょう。

しかし、障害をもっているからといって幸せになれないかというと、そんなことはありません。障害のありなしに関わらず、幸せは平等に手にできるものだと思います。私は仕事でもプライベートでも障害があることで困ることが山ほどありますが、今の職場には支えてくれる人がおり、家族と仲良く暮らすことで、ありがたいことに「幸せ」を感じています。

それから、障害をもつ方と接する方も大変でしょう。本音を言えば避けたいと思うこともあるのではないでしょうか。

仕事などで関わりを持つ方は、発達障害についての本を参考にしながら関わるとお互いのストレスが軽減されることがあります。もちろん全ての障害をもつ人に本の内容が適用されるわけではありませんが、接し方に困った時には助けになると思います。私が障害をもつ立場からお勧めする本は、以下の2つです。


私の拙い記事が、誰かのお役に立てることを願っています。
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たこぼうずさまのブログには、自身の経験からの保育にまつわるできごとが載っています。保育に携わるものとして、共感できる内容が散りばめられていますよ!
≫『男性保育士の本音 たこぼうず』

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この記事を書いた人

たこぼうず
公立幼稚園教員、主任保育士、保育所事務員を経て、現在法律事務所にて勤務中。ワークライフバランスを大切にし、子ども が産まれた時には半年間の育児休業を取得。「保育者のワークライフバランスは、子どもの笑顔につながる」という信念をもち、「保育現場を知る法律の専門家」として、保育業界の労働環境改善、モデル園立ち上げを目指す。広汎性発達障害(アスペルガー、ADHDを含む)をもち、障害者手帳3級を取得。
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