“設定保育”と”自由保育”。みなさまも一度は聞いたことがあるかと思いますが、設定保育を方針にしている園と自由保育を方針にしている園とでは、保育の進め方に大きな違いがあるのをご存じでしょうか?本日はそれぞれの特徴や相違点について、メリット・デメリットとともにご紹介します。
設定保育(一斉保育)の特徴と保育者の役割
設定保育とは?
設定保育とは、明確な指導目標を持ち、保育者が活動の中心となって行う保育方針のことです。クラス全体やグループごとで、全員一緒に活動を行うことが多いため”一斉保育”とも呼ばれます。保育士が中心となりますが、主体はあくまでも子どもたちです。
設定保育での保育者の役割
同じテーマで活動を行うため、保育者は対象となる園児それぞれに注意を払い、子どもたちが主体的に取り組めるよう配慮する必要があります。また、興味を持って取り組めるように、子どもたちの発達段階をよく理解して指導計画を立てなくてはいけません。
●保育者の役割● |
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□ 一人ひとりが十分に活動できるよう、個人差にも配慮しながら適切な指導目標や方法を考える □ 子どもの発達段階や興味を理解した上で、指導計画を立てる □ 子どもの人数、行う時間や場所についてよく考え適切な環境設定を行う □ 集団で保育をする際は、個別への指導も忘れないようにする |
自由保育の特徴と保育者の役割
自由保育とは?
自由保育とは、子どもの自発的な活動を重視し、子どもたちの活動に即して保育者が指導する保育方針のことです。
自由保育での保育者の役割
何もかもが子どもの自由ではなく、保育者はねらいを持って、一人ひとりの興味・関心に合わせた環境設定を行う必要があります。また、さまざまな経験ができるよう、遊びの発展の仕方などに配慮をしなくてはいけません。
●保育者の役割● |
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□ 子ども一人ひとりの興味・関心に合わせた環境設定を行う □ 遊びの中で、一人ひとりの興味を引き出しながら個別指導を行う □ なかなか遊び出せない子には必要に応じて働きかけ、遊び出せるきっかけを作る □ 遊びがより楽しく、より豊かな経験となるよう配慮し関わる |
設定保育と自由保育のメリット・デメリット
主に集団で行うことが多い設定保育と、個々への関わりが多い自由保育。保育者の役割や配慮点の違いがわかりました。続いては、設定保育と自由保育のメリット・デメリットについて考えていきましょう。
設定保育のメリット・デメリット
●設定保育のメリット● |
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□ 集団の中で集中力や忍耐力が育つ □ 集団行動が身につく □ 保育者は、一度で全幼児に意図的な指導を展開できる |
●設定保育のデメリット● |
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□ 保育者などからの指示がないと動けないことがある □ 自由な発想をすることが苦手な子もいる □ 保育者は子どもたち個々の状況に合わせて、一斉活動の内容を変更することが難しい |
子どもたちは集団の中での過ごし方や関わり方を学べ、忍耐力や集団行動が身についていきます。一方で、指導計画を基に保育者が中心となって活動することが多いため、指示がないと動けない子が出てくることもあるでしょう。
保育者にとっては、集団で1度にひとつの活動ができることがメリットとして挙げられますが、同時に集団の中での個別の配慮が求められます。
自由保育のメリット・デメリット
●自由保育のメリット● |
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□ 興味のある遊びから、交友関係が自然と広がる □ 自分で考えて行動できるようになる □ 保育者は、一人ひとりの興味や性格、個性を理解しやすい |
●自由保育のデメリット● |
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□ 子ども同士のトラブルが増える □ 小学校入学後、集団での活動に慣れるのに時間がかかる場合がある □ 保育者は、ねらいに沿って個々の興味や発達段階に合わせた活動を、子どもたち一人ひとりに行う必要がある |
子どもたちは自由に遊ぶ中で、自分で考える力や行動する力が身につくと同時に、友達と自由に関わる時間も増えるのでトラブルが多くなることもあります。
保育者は、比較的じっくり一人ひとりと関われるため、子どもたちの個性を把握しやすい一方、それぞれの発達段階をしっかり把握し、適切なタイミングでねらいに沿った活動を行わなければならない大変さもあるでしょう。
設定保育と自由保育を比べてみて
メリット・デメリットについては、全ての子どもたちに当てはまることではありません。
設定保育を採用している園でも自由に遊べる時間はあり、自由保育を実施している園でも、リズム遊びなど一斉に活動することはあるでしょう。
筆者は実習で、設定保育と自由保育の両方を経験しました。設定保育では、保育士1人で子どもたち30人に声をかけ保育を進めていくことに苦労し、自由保育では、個々の成長に合ったタイミングで発達に応じた経験ができるよう、環境設定を行うことに苦労しました。
どちらが良い悪いとは一概には言えませんが、自分が保育をする上で合う、合わないはあるかもしれません。
方針に違いはあっても、成長の土台を作るということには変わりません。それぞれの園の方針の中で、保育士や幼稚園教諭は子どもたち一人ひとりの成長や発達を考えながら関わっていくことが大切ですね。
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“設定保育と自由保育の違いってなあに?” への2件のフィードバック
仕掛けることの大切さと、見通し、これが、肝となりますよね。
どちらの環境も、大切だと思います。
保育は静と動。
緩急で無限になりますよね。
どちらにせよ、保育者間の見通しを、たてた保育と、環境設定が必要になりますね。
ホエールさん
コメントありがとうございます!
そうですよね。こちらの働きかけと見通しが大切になりますね。
「保育は静と動。緩急で無限。」上手な使い分けで子どもたちの過ごし方も変わってくるので、その通りだと思いました。