夫婦で24時間預かります!~足立区の保育室「こどものへや」~


時代と共に子育て支援へのニーズは多様化し、保育もそれに応じて変化してきました。24時保育も多様化するニーズに応えた一つの新しい保育の形です。24時間以上こどもを預かる施設「ベビーホテル」は全国に34,511か所あります。(平成25年3月・厚生労働省調べ)
365日、24時間こどもを見てくれる…そんなこどもを預ける場所に困っている保護者が助かる保育室が東京都足立区にあります。その保育室の名前は「こどものへや」です。保育士の永見博之(ながみひろゆき)さんと助産師の永見悦子(ながみえつこ)さんご夫婦が「子育て・仕事に頑張るお父さん、お母さんのサポートをしたい」と2012年7月に開設されました。
こどものへやとは、どのようなところなのか実際に伺ってきました!
24時間保育室「こどものへや」とは?
- もともとは、会社員の営業マンとして働いていたご主人と看護師として働いていた奥様。なぜ保育の道を選んだのかお聞きしました。
―――なぜご夫婦でこどものへやを開設されたのですか?
悦子さん:看護師時代は、小児科で働いていました。こどもに関わることが多く、こんなに楽しく仕事をしている人は他にいるのかと思うくらい仕事が大好きでしたが、結婚・出産を機に辞めることに…
復職後はなかなか小児科での仕事に就けず、自分の中でこどもと関わりたいと悶々とすることもありました。そのような中、出産時の体験を思い出し、助産師ならこどもと関われると考え、1年間学校に通って助産師の資格を取ったんです。
我が子もいましたが、夫と義理の両親の協力のおかげで、無事資格を取得できました。その時は人間は一人では生きていけない、周りの協力があって生きていけるんだと感じました。
―――その時の経験が今に繋がっているのですね。
悦子さん:直接的なきっかけは、その時に感じたことと、助産師として働いていた病院の提携託児所が年中無休ではなかったこと。これでは、こどもがいる母親は休日働けないですよね。だから私が託児所を行うなら24時間・年中無休でやると思っていたんですよ。
お産は奥が深く、お母さんたちとの関わりも楽しくやりがいはありましたが、小児科で働いていた頃の気持ちとは違ったんですね。
その後再度小児科に配属され「やっぱりこれだ!」と感じ、自分のやりがいの中心は「こどもとの関わり」にあったことに気が付きました。
勤務先の託児所のこともあり、その頃から「自宅で保育室ができたらおもしろいな」と考えるようになりました。このころはまだ妄想のようなものでしたが、あんなことやこんなことも行いたいと考え、夫にも話していたんです。
開設するなら保育士資格があった方がいいと夫が働きながら保育士資格を取得し、少しずつ本格的になり実現へ向けて動き出すことができました。
―――開設から3年。開設当初と現在を比べるといかがですか?
悦子さん:開設してみると、全てが計画通りにはいかないと感じました。
例えば、大人数で登園してきても一度に入れるよう大きい出入口もつけましたが、一度に大人数来ることが少ないので、今は小さい出入口のみ使っているなど予想と違うこともありますね。
―――常にお二人で職場に待機しているのですか?
悦子さん:はじめは、いつ何人来るかも想像つかなかったので、1日中2人で待機していたのですが、現在は外に出て看護にも携わっています。医療の現場にいることで感染症の最新流行状況が自然と把握でき、託児所での予防対策につながっています。
博之さん:個人経営で一番怖いのが、自分たちだけの考えになってしまうことですが、外に出ることでさまざまな意見も聞けるので、外部との関わりは大切だと思っています。
- ご夫婦の想いが詰まった「こどものへや」とはどのようなところなのか、実際拝見させていただきました。
預かり人数 | 最大9人 |
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年齢 | 基本は2歳まで |
利用方法 | 月極・予約・一時預かり |
- 本来は12人預かれるのですが、安全な保育の提供を考え9人で行政に届けを出しています。
年齢が2歳までというのも、より活発になる2歳以上は、長時間室内で過ごすのはストレスが溜まってしまうのではないかという配慮からだそうですが、状況に応じて臨機応変に対応しているそうです。
―――やはりリピーターの方やご近所の方が多いのでしょうか?
博之さん:保育園に入るまでのつなぎとして利用される方が多いので、リピーターや近所の方が多いです。新幹線に乗って遠方から来た方もいます。
―――それだけ需要があるのですね。預かる際に理由は問わないそうですが…
悦子さん:保育の理由を問わないので、ご夫婦のリフレッシュ時などでも利用できます。ご夫婦だけで食事や映画に行くなどちょっとした息抜きができることで、保護者のストレスが軽減しこどもたちにも良い影響があるんです。
―――障がい児の預かりもされているのですか?
悦子さん:障がいのある子とは、小児科でも接することがありました。預かりの際は、保護者の方と十分に話し合いをして受け入れが可能か否かを判断します。
- 障がいのある子の受け入れの際も料金は一律です。これは、障がいがあることを特別視しない悦子さんのこだわりなのだそう。他にもおふたりのこだわりが随所にありました。
◆こどものへやにおけるこだわりの一部
室内・おもちゃ | 木を基本としている |
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庭 | 土地柄さまざな植物が勝手に生えてくるので、それを活かしている |
食事 | 木の食器を基本とし、ご飯には雑穀・(餅キビ・餅麦、香り米)を混ぜ土鍋で炊いている |
―――さまざまなところに木が使われていますね。
悦子さん:木は、触った感じや目に入る印象が温かく、いずれ自然に返ることができるので、地球に優しいところがいいと思い使っています。
こどものへやのこどもたち
- こどものへやでの過ごし方をお聞きしました。
7:00 | 朝ごはん |
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12:00前 | 昼ごはん お昼寝 |
15:00 | おやつ |
18:00 | 夕ごはん |
19:00 | お風呂 |
20:00 | 消灯 |
- 上記は基本的な過ごし方で、年齢やその時の様子により食事の時間の変更などもあるそうです。
―――利用時間が個々により異なると思いますが、その際の配慮点などありますか?
博之さん:開設前は、他の子の保護者がお迎えに来られる際に泣いたりすると思っていたのですが、全体の人数が少ないからか、不安な様子の子は少ないです。
いまではお迎え前に私たちが帰りの支度をしていると、自分で気づいて片付けなどをするようになっています。日々の繰り返しや、子どもたちが気持ちを切り替えられるように、行動などで示すことが大事ですね。
―――24時間保育室ですが、実際に24時間以上預かることはあるのですか?
博之さん:多くはないですが、ありますね。その際、布団カバーの掛替えなどしなくてよいように、寝具類や食事に関する必要物品(エプロンなど)は全てこちらで準備し、保護者の方の負担が少なくなるよう心がけています。
―――それは嬉しい配慮ですね!初めての子は泣く子もいますか?
博之さん::いっぱいいますよ。この3年間でも、ものすごく泣いた子が2人ほどいましたね。
ある子は4時間、飲まず食わずで泣いていました。3日間連続で入っていて、2日目の午後にお茶を飲んだんですね。それから大丈夫になりましたよ。
―――そのような時はこどもたちにどのように関わっているのですか?
博之さん:個々によって違いますが、基本的には見守ることが多いですね。
泣くと涙と鼻水がでるので、それを拭いてあげる。それを繰り返していくと、「この人は助けてくれる人なんだ」とわかってもらえ、心を開いてくれるきっかけになります。
- 預かり時間や保護者の事情もさまざまな「こどものへや」。自分の家のような環境が安心できる要素にもなると教えていただきました。
こどものへやの保護者の方々
▲(右)傷など治すと言われている植物「ユキノシタ」
(左)自由に借りることができる保護者向けの本
- 料理が大好きな悦子さん。こどものへやでは、預かりだけでなく、保護者の悩み相談や料理教室などのイベントも開催しています。
―――イベントを行うきっかけは何だったのですか?
悦子さん:子どもとお母さんの食事会をする機会があったのですが、そこで「何を使っているの?」「どうやって作るの?」という声をいただき、そこから料理教室を始めました。
―――イベントなどでも保護者との関わりは多いと思いますが、保護者対応で心がけていることはありますか?
博之さん:個人で行っている園なので、個々に関われる時間も多いんです。そのため、こどもの様子は細かくお伝えするように心がけています。
お二人にとっての保育・子育てとは?
―――お二人にとっての保育・子育てとは何ですか?
博之さん:保育理念など決めた方がいいか悩んだのですが、大げさなものは立てず、こどもたちに人生を楽しく生きてもらいたいと思っています。
悦子さん:子育てとは、人類が昔から営んできた普遍的な営みであり、本来ならば本能に従って滞りなくできるものだと思います。しかし、現代社会は働き方や家族の形態に変化があり、人間は本能を忘れてしまったのでは?と思うことがあるくらい子育てがスムーズにいかない場面が多くあります。
そのような時にちょっとお手伝いさせていただく、昔であればどこにでもいた近所のおじいちゃんおばあちゃんのような役割を担えたらと思っています。こどものへやを自宅のような、第二の安心できる場にしたいですね。
―――現代の子育てのあり方についてはどのように思われますか?
博之さん:昔に比べ、核家族化が進み今の時代は保育園などに入らないと保護者以外の大人と関わる機会が少ないと思います。ここへ来ることで保護者以外との大人と関わるのもいいなって思えるようにしたいですね。
―――最後に今後の目標をお聞かせください。
博之さん:今のまま持続しつつ、保護者の声を取り入れながら、さまざまな方の役に立てたらと思っています。
また、ベビーホテルの位置づけももっと公にしてほしいですね。知らない人から見ると、このようなところは、勝手にやっていると思われがちですが、東京都の監査を受けてしっかり許可を得て運営しています。世の中にあるような誤解をなくせたらと思います。
- ご夫婦で息ピッタリの連携で保育をされているこどものへや。時に夫婦間で意見がぶつかることもあるそうですが、それは「こどものへや」を良くするためであり、必要なことだと話していました。
保育園や幼稚園では、人間関係の複雑化によりなかなか議論ができないこともあるでしょう。しかし、意見し合うことはお互いを認め、高めていくために必要なことであり、働きやすい、こどもが過ごしやすい環境づくりのためにも、必要であることに改めて気づかされました。
本日はありがとうございました。
今回取材させていただいた方 |
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永見博之(ながみひろゆき)さま 昔からこどもが好きだったこともあり、会社員として働きながら保育士資格を取得。その後奥様とともに24時間保育室「こどものへや」を開設。 |
永見悦子(ながみえつこ)さま 看護師を経験後、助産師の資格を取り活躍。その後ご主人様と共に24時間保育室「こどものへや」を開設。 |
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