IQ120!東京いずみ幼稚園で実践するミュージックステップの魅力


東京都足立区にある東京いずみ幼稚園。ここでは、子供達の才能や潜在能力を伸ばし、心を育てるために「ミュージックステップ」という音楽指導をはじめさまざまな活動を取り入れています。
今回は園長の小泉敏男さんに、「ミュージックステップ」の魅力と、目指す保育のあり方についてお話を伺ってきました!前編、後編に分けてお届けします。
前編は、東京いずみ幼稚園とミュージックステップについてのご紹介です。
東京いずみ幼稚園ってどんなところ?
音楽や漢字、算数や水泳…さまざまな教育方法を取り入れ、子供達の潜在能力を引き出す保育をされている東京いずみ幼稚園。まずは、園の特徴を見てみましょう。
- 幼児教育の目標とねらい
【健康・自立】強い体と心を持つ子供
【人間関係】仲良く遊ぶ子供
【環境】よく考える子供
【言葉】想像力のある子供
【表現】豊かな心の子供
- より具体的な取り組み
ミュージックステップ(MS) | リトミック、 鍵盤ハーモニカや器楽合奏、 頭声発声による歌唱など音楽の基礎を体験。豊かな感性を育み、何事にも自発的に取り組もうとする自発性が育つ |
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石井式国語教育 | 漢字絵本やカードなどを用いて読書好きな子に育てる。集中力を高め、使う言葉が豊富になり、情操豊かな心情が育まれる |
数遊び | 百珠そろばんや時計、数字カードをテンポよく使って学習する |
外国人講師による英会話 | 英語の歌やゲームを活用した活動を通して、楽しみながら英語学習を行う。音感で育まれる聴く耳の良さや集中力が、英語学習の効果を倍増させる |
専任講師による水泳指導 | 屋内温水プールで年間を通して行う。楽しく励みになる指導により、卒園時には皆が泳げるようになる |
専任講師による体育指導 | 体育指導がない日も体力づくりができるよう普段の保育も連携して行い、発育に即した指導を取り入れる |
東京いずみ幼稚園では、教育目標に合わせたさまざまな教育方法が取り入れられており、先生の力量によって左右されることなく、子供達に同じ教育が行き渡るようカリキュラムが組まれています。
絶対音感がつく!ミュージックステップってなに?
ミュージックステップについて、東京いずみ幼稚園の園長である小泉敏男さんにお話を伺いました。
▲子供達への優しい笑顔が印象的な 園長 小泉敏男(こいずみとしお)さん
音楽指導法の一つミュージックステップとは?
―――ミュージックステップ(以下MS)とはどのような指導方法なのですか?
MSは、子供が大好きな音楽を用いた教育方法で、”感じる”体験をうまく利用しながら子供の成長を促す指導法です。MS創始者の譜久里勝秀先生は、ご自身による音楽教室での試行錯誤と、その後の33年にわたる全国での普及活動の中で、音楽教育メソッドとしてまとめられました。
五感の中でも聴覚は幼児期から優れている!
- 幼児期は五感を通してさまざまな経験をし、その五感を刺激することで成長していきます。
―――『”感じる”体験』というキーワードがありましたが、なぜ音楽がよいのでしょうか?
子供の様子を見ていると、どの子も綺麗なメロディに耳を澄ませたり、リズムに合わせて踊ったりするのが大好きです。子供を育てる時に、嫌なことや苦手なことをするよりも、好きなことや得意なことを発達時期に合わせて取り組む方が育てやすいですよね。ですから、音楽は幼い子にとって、最も有効な教育方法です。
五感の発達の話をしますと、視覚は生まれてから徐々に発達していくのに比べ、聴覚は胎児の頃から早く発達し、聞こえるようになっています。胎教の一環として音楽を聴かせたり、赤ちゃんに話しかけたりする方もいます。また、幼い子は誰から教わったわけでもなく、自然と言葉を覚えて話せるようになりますよね。これが誰もが体験する母国語の獲得方法です。わざわざ”教え込む”ようなことはしません。
つまり、これだけ敏感な「良い耳」を持った子供達ですから、聴覚を利用した教育方法が一番向いているのです。母国語の獲得と同じように、音楽を利用すれば誰でも上手に子育てができます。
―――実際の活動はどのような内容ですか?
譜久里勝秀先生のまとめられたテキストを基に、一歩ずつステップアップしながら音楽を楽しめるようになっています。誰でもできる「ポン」と1つ手を打つ活動から行うので、全員が少しずつ楽しんで参加できますよ。具体的には、リトミックや身体反応、歌唱と聴奏、テーマ課題を行っています。
絶対音感が定着することによってIQが高くなる?!
―――MSでは子供の育ちにどのような影響がありますか?
子供にとって感動する体験は心にずっと残っていきます。歌を歌い、その歌を聞いて喜んでくれる人がいたら、その体験は歌った子供達にも伝わるでしょう。そういった良い体験をすることで良い心が育っていくのです。
能力面では、絶対音感が定着します。母国語の獲得同様、聴覚が発達する幼児期に保育の中に音楽を取り入れ、適切な環境を整え繰り返し行うことで自然と身につくようになりますね。
―――MSはそのような子供の育ちに適切な環境を作りだしてくれるのですね。
個々に差はありますが、より好い音楽的環境を提供することで、大きな差なく子供達の成長に好い影響がもたらされることを実感しています。幼児期の経験、音楽を通した刺激は脳にちゃんと刻まれて消えないんです。幼児期に行う意味はそういったところにあります。
―――刺激や経験が子供達の心や脳に残ることでどんな好い影響があるのでしょうか?
絶対音感が定着するまでには、毎日たくさんの音を聞いて反応するという活動を繰り返していきます。聞いて反応することは実は頭をたくさん使うことなので、右脳左脳が大きく発達し、考える力も育ちます。このことはドイツの科学者ゴットフリート・シュラウク博士の研究でも明らかになっています。
卒園児の平均IQは毎年120以上を保っており、脳に刺激がある活動は、卒園してからも好い影響があることがわかりました。このように積み重ねた経験が子供達に残り、成長につながっています。
ミュージックステップとの出会い!導入後の周りの反応は…
- 能力、感性とさまざまな面に好い影響を与えるMS。幼稚園で取り入れることになったのはなぜでしょうか?気になる導入当初の周りの反応も伺いました。
取り入れたきっかけはある人との出会い
―――MSを導入しようと思ったきっかけを教えてください。
昔は今ほど幼稚園に子供が集まりませんでした。入園してもらうために何かアピールが必要だと考えたんです。かといって頭でっかちなことは批判されます。私自身も最初は詰め込みや押しつけのような保育はしたくないと思っていました。しかし、実際は何が押しつけで詰め込みかもわかっていなかったんですね。
また、ただ集団で友達と過ごし遊ぶだけの保育だと、当時40人だったクラス運営はうまくいかなかったのです。クラスはまとまらず、出席確認の返事もなかなかできませんでした。「遊ぶだけではいけないということを訴えなければ!」「園運営のためにも子供達を集めなければ!」という思いがあり、近隣の園とは違うことをしようと考えました。
―――それでMSにたどり着いたのですか?
最初は水泳を取り入れました。実際に行ってみてわかったのは、詰め込みでも押しつけでもなく子供達は楽しそうに泳ぎ、そして泳げるようになるということです。
それから漢字、MSと徐々に取り入れていきました。MSの導入は、創始者の譜久里勝秀先生との出会いがきっかけです。よくありがちな研究者や音楽家の机上の空論ではなく、実体験を基に作られたということに共感し導入しました。
―――導入時、職員の方は戸惑いませんでしたか?
最初はMSのテキストを見て驚いていましたね。ピアノが苦手な先生もいたので最初はできないと思っていたみたいですよ。しかし、実際に譜久里先生の研修を受けた時、「音感が無くても、ピアノが弾けなくても単音で弾ければ教えられるのがMS」とおっしゃっていたので、職員たちは敷居がとても低く感じられたようです。そこまで言われたら「できない」とも言えなかったんでしょうね(笑)
ピアノが苦手な先生も子供の成長を感じることで「自分でも教えられるんだ!」と自信がついていったようです。私にその嬉しさを伝えてくれる先生もいましたよ。
しかし、保護者からは批判の声が…
―――MSでは聴音をする際アイマスクを使用しており、とても印象深かったのですが、保護者の方の反応はいかがでしたか?
水泳の際はすんなり受け入れられたのですが、漢字、MSはすごい批判がありましたね。理解していただけるよう説明を何度もしましたが、説明だけでは批判はなくなりませんでした。
「こんなことをさせるためにいずみ幼稚園に入れたんじゃない」「アイマスクをしてまでやらなくても…」いろいろな声がありましたね…
そんな批判にも負けずに実際にやってみたら子供がどんどん成長し、MSの楽しさや必要性を子供達自身が保護者の方に証明してくれました。子供達はさまざまなことに集中し、良い意味で我慢強くなり、発表力もつき姿勢も良くなっていったのです。
論より証拠ですね。批判した方ほど感心してくれました。我が子が成長して批判する人はいません。「親を変えるのは難しいが、子供が変わると親は変わる」ということがわかりました。
実際の保育・子供達の様子を拝見!
- 職員の戸惑い、保護者からの批判…さまざまなことを乗り越え実現したMS。実際の保育を見てみましょう!
登園して園庭で思い思いに遊んだ後、全体朝会があります。この日は七五三の日が近かったので、小泉園長は漢字を使って七五三の話をしていました。子供達は真剣に耳を傾けています。
この日は月に1回の歌朝会です。先生のピアノに合わせ発声練習をした後、漢字で書かれた歌詞を見ながら歌います。その歌声は幼児とは思えないほどキレイな声!怒鳴ったりただ大きな声を出したりするのではなく、頭声発声(裏声)使った透き通る声が響きます。
その後、各保育室に移動し一斉活動に入ります。まずは年少クラスの紹介です。朝の会では、漢字で書かれた教育目標を音読します。姿勢も良くおふざけをしている子はいませんでした。
朝の会後はいよいよMS!最初は身体を使ったリトミックです。先生のピアノに合わせ、歩いたり、手を叩いたり、ジャンプしたりと全身を使ってピアノの音を表現します。
その後子供達は自分で椅子と鍵盤ハーモニカを用意します。年少とは思えない機敏な動きに驚きました!
ピアノの音を聴きながら、ドはひざ、レはお腹、ソは頭など体で音を示します。アイマスクをつける理由は聞くことに集中し、聴音を楽しむためだそう。アイマスクがないと、目をつぶることと、音に集中することの2つを同時にしなくてはいけないので、子供達にとっては大変になってしまいます。
次は年中クラスを見てみましょう。こちらでもMSを行っています。年中ではテキストを使用し、年少より長いフレーズの音を聞いて鍵盤ハーモニカを吹いていました。
続いて年長クラスは、MS後のお絵かきの時間でした。毎日、1つの物をモデルとして鉛筆で描いていきます。MS以外にも繰り返して行う活動があり、こちらの絵画では子供達自身で過去の作品を見られるので、保護者だけでなく自分でも成長を感じられるのです。
小泉園長が「上手になったね」と褒めると、子供達はとても嬉しそうな表情をしていました。
最後に、東京いずみ幼稚園『平成24年度MS定期演奏会』の様子をお届けします。
▲上記は、年長さんが歌う『花』です。
▲こちらは年長さんの合奏『軽騎兵序曲』約8分という長い時間でも集中して演奏をしています。
後編では、小泉さんの保育観について迫っていきます!
≫後編記事はこちら
今回取材させていただいた方 | 小泉敏男さま 1952年、東京生まれ。小学4年生から中学3年生までを対象として運営していた小泉補習塾を経て、1976年、父・小泉孝義とともにいずみ幼稚園を創設、副園長に就任。石井式漢字教育、ミュージックステップ音感教育などの導入、屋内温水プールの設置など、当時としては画期的なプログラムを次々と導入。1995年に園長に就任。2004年には第13回音楽教育振興賞を幼児教育界で初めて受賞。(有)幼児音楽出版代表も務め、ミュージックステップ普及活動も行っている。著書に『東京いずみ幼稚園式 美しい日本語が、心の強い子を育てる』があり、メディアでも多く取り上げられている。 |
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