その持ち帰り仕事はサービス残業!?~保育業界の労働環境を改善しよう~


こんにちは。元幼稚園教諭・保育士で、現在法律の仕事をしている“たこぼうず”です。さっそくですが、皆様の園では、ご自宅などに持ち帰ってする仕事はどのくらいありますか?壁面製作、おたより作成、指導計画作成、教材準備、業務連絡、ピアノの練習…。保育業界は、いわゆる「持ち帰り仕事」が多い業種ですよね。今回は、保育業界の「持ち帰り仕事」を通じて、労働環境について考えてみます。
持ち帰り仕事には、残業代が出ないのが現実
教材準備も書類作成も、本来は職場で業務時間内に行うものとはいえ、現実的に保育現場はどこも激務で事務仕事をする時間など、なかなかとれないのではないでしょうか。私自身も、業務時間は保育で手一杯で、教材準備や書類作成はほとんど自宅に持ち帰ってしていた時期がありました。
しかし、持ち帰って仕事をしても、その仕事には給料が出るわけではありません。そもそも職場で残業しても残業代が出ない、いわゆるサービス残業が慣例化した職場も多いかと思います。
現在の法律では、持ち帰り仕事には残業代が支払われないのが現実です。なぜかというと、「残業」は本来、使用者の「指示命令の下」行うものであるからです。つまり、保育業界の持ち帰り仕事は、あくまで「自主的なもの」であるという解釈になるでしょう。
園長から、「自宅で壁面製作をしてきなさい」と指示命令されることはおそらくあまりなくて、多くの場合はやるべき仕事が終わらず「自分で判断して」自宅に持ち帰っている、もしくは暗黙の了解でそのような仕事は自宅に持ち帰ってすることになっているのではないでしょうか。
持ち帰り仕事を指示・命令された場合は?
仮に園長に、「自宅でやってきていいですか」と聞いた場合、一般的には自宅に持ち帰らないように仕事の仕方を調整するよう言われるでしょう。使用者は「指示命令」はなかなか明確にはしないものです。
もし「自宅でやってきて」と言われた場合は、それを記録するなり、ボイスレコーダーで録音するなりすれば、証拠として立証し、割増賃金を請求することもできますが、ただでさえ多忙な保育現場でそこまでの余裕はないですよね。
やはり根本的には「働き方」の改善にかかっていると思います。
どのような働き方の改善が必要か、どうすれば改善できるかは、これまで記事にしてきましたが、そうは言っても個人の力ではどうにも変えられないものがあります。
持ち帰り仕事をしないためにできること
- 記録をつける
私が手始めにお勧めしたいのは、「記録」をつけることです。この場合の記録は、手書きで手帳などに残すのがよいでしょう。残業した時間、残業で行った業務を記録しておくだけでも後々役立つと思います。それは、法的措置をとる場合の証拠となるのはもちろんのこと、自分の業務を客観的に整理し、上司に「説明」するのに役立ちます。
- 記録・数字を根拠に上司に説明する
「とにかく大変なんです。」という説明では、説得力がありません。
と説明すれば、きちんとした上司であれば、
「なぜ保育から30分しか抜けられないのか」
と原因を追究します。原因が分かることで、
「Aの仕事には30分でできるレベルのものにしよう」
などと対策が講じられ、
などという具体的な手段へと移ることができます。
- 上司が精神論を語るタイプの場合は…
上司が「それはあなたの能力が足りないからだ」「大変なのはあなただけではない」「もっと気合を入れてやりなさい」などと精神論を語るかもしれません。その場合は、労働基準監督署に報告するなど、別の手段をとることができます。
「自己犠牲の精神」では、保育の質も待遇も上がらない!
- その謙虚さで、自分の首を絞めていませんか?
保育現場の良さでもあり、課題でもあるのは、「自己犠牲の精神」だと私は思います。大変でも自分が頑張ればいい、できないのは自分の能力がないからだ、子どもとかかわる好きな仕事ができているからいいという謙虚さが、なかなか労働環境を改善できない一因だと考えています。
謙虚さは素晴らしいことですが、そこにつけ入れられてしまうと、最終的には体を壊すか、退職するかという選択肢になってしまいます。それでは長期的な人材確保ができず、保育の質は向上しません。私は、保育の質のため、子どもたちのため、保育現場の労働環境を改善する必要があると考えています。
- 一人の保育者ができることには限界も…
私自身、現場で主任を担当し、全職員がほぼ毎日定時退社、持ち帰り仕事なし、有休取得率90%以上の保育園を作ることに成功しました。しかし、残念なことにそれは長続きしませんでした。メンバー交替によって同志が減り、維持できなくなったのです。
私は現場で一保育者として労働環境を改善することに限界を感じ、転職を決めました。
業界を変えるには、トップを変える必要がある
私は、「保育現場を知る労働関係法律の専門家」として、コンサルタント業務を行い、業界のトップと共に労働環境を改善する仕事をしようと決めました。そのためには、労働環境をよくすること(一般的には「健康経営」や「ワークライフバランス」と呼ばれています)が、業績、組織運営、また保育の質にどのようなメリットがあるか、説得していく必要があります。また、私自身も労働環境が理想的に整えられた「モデル園」を創る計画であり、現在その準備を進めています。
まだまだ法律家としては駆け出しですが、少しずつ得たものを、ほいくらいふのコラムに書いていけたらと思います。今後ともたこぼうずのコラムをよろしくお願いいたします。
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『男性保育士の本音 たこぼうず』
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